差戻後の第一審において改めて本案の終局判決がなされるまでに、訴の取下がなされた場合には、再訴禁止の効果を生じない。
差戻後の第一審における訴の取下と再訴禁止。
民訴法237条
判旨
第一審の本案判決が控訴審で取り消された後、差戻後の第一審で改めて判決がなされるまでに訴えを取り下げた場合、再訴禁止の効力は生じない。また、借地法の適用対象となる「建物」の所有目的かは、構造のみならず賃貸借契約の主目的や合意内容から判断される。
問題の所在(論点)
1.第一審の本案判決が控訴審で取り消された後、差戻後の第一審において訴えを取り下げた場合、民事訴訟法262条2項(旧237条2項)の再訴禁止規定に抵触するか。2.簡易なトタン屋根の工作物の建築を許容する土地賃貸借が、借地法(現・借地借家法)上の「建物所有を目的とする賃貸借」に該当するか。
規範
1.民事訴訟法262条2項(旧237条2項)にいう「本案につき終局判決ありたる後」とは、訴えの取下げにより失効すべき終局判決が現に存在することを指す。一度言い渡された第一審判決が上訴審で取り消された後は、差戻後の第一審で新たな判決がなされるまで「本案の終局判決」は存在しないため、再訴禁止の効果は生じない。2.借地法上の「建物所有を目的とする賃貸借」に該当するかは、工作物の構造(壁・床の有無等)に加え、賃貸借の主たる使用目的や当事者間の合意内容に基づき判断される。
重要事実
上告人は、農産物の集荷・競り売りのための置場として土地を借り受けた。契約上、雨露を防ぐ程度のトタン屋根の簡易なバララックの建築のみが許され、壁や床を設けない約定であった。実際にも、地面に直接立てた丸太にトタン屋根を架した周囲に障壁のない工作物が建築されていた。第一審の本案判決後、第二審で同判決が取り消され差し戻されたが、その差戻後の手続において訴えが取り下げられた後、再度本訴が提起された。相手方は再訴禁止規定(旧法237条2項)への抵触を主張した。
事件番号: 昭和31(オ)358 / 裁判年月日: 昭和33年4月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において訴えの取下げがあった場合、その部分に関する第一審判決は当然に失効するため、控訴審は残余の部分についてのみ審理・判断を行えば足りる。 第1 事案の概要:上告会社(被告)に対し、金員支払の請求および土地明渡の請求がなされていた事案。控訴審(原審)において、金員支払請求の全部および土地明渡…
あてはめ
1.本件では、第一審の本案判決が第二審で取り消され、その効力が既に失われている。この状態では、取下げにより失効すべき「本案の終局判決」が存しないため、再訴禁止の制裁を課すべき実質的根拠を欠く。したがって、再訴禁止規定には抵触しない。2.本件賃貸借の主目的は農産物置場であり、合意された建築物は壁や床を持たない簡易な構造に限られていた。現に建築されたものも丸太と屋根のみの工作物であったことから、当事者間に借地法上の保護に値する「建物」を所有する合意があったとは認められない。単に工作物が建物に該当しないことのみならず、契約の趣旨に照らしても建物所有目的とはいえない。
結論
1.本件訴訟の提起は、再訴禁止規定に抵触せず適法である。2.本件土地賃貸借は建物所有を目的とするものではなく、借地法の適用は受けない。
実務上の射程
民訴法262条2項の「終局判決後」の意義を限定的に解釈した重要判例である。答案上は、判決の効力が失われた「差戻後」の取下げは、制度趣旨(審理の重複による裁判所の労力浪費防止と被告の応訴負担軽減)を害しないため再訴禁止に当たらないと論じる際の根拠となる。また、借地権の成否については、構造上の建物該当性だけでなく「契約目的」を重視する実務の基本姿勢を示している。
事件番号: 昭和38(オ)1407 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
請求権保全の仮登記でも、これに基づく本登記がなされたときは、仮登記以後におけるこれと相容れない中間処分の効力を否定する効果を有するものと解すべきであり、所有権移転請求権保全の仮登記以後における所論賃借権の設定も右にいう仮登記と相容れない中間処分たるを失わない(昭和三三年(オ)第八七一号同三六年六月二九日第一小法廷判決、…
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
事件番号: 昭和37(オ)1277 / 裁判年月日: 昭和39年3月13日 / 結論: 棄却
甲所有の土地の一部を乙が賃借して家屋を建築して居住し、甲の居住家屋と相隣関係をなすとき、甲が甲使用の宅地部分に物置を設置して乙が賃借地の境界に植えた生垣の一部を枯死させたとしても、原判示(第一審判決引用)事実関係(第一審判決理由参照)のもとにおいては、乙の賃料不払を理由とする甲の右賃貸借契約解除は権利濫用にあたらない。