甲所有の土地の一部を乙が賃借して家屋を建築して居住し、甲の居住家屋と相隣関係をなすとき、甲が甲使用の宅地部分に物置を設置して乙が賃借地の境界に植えた生垣の一部を枯死させたとしても、原判示(第一審判決引用)事実関係(第一審判決理由参照)のもとにおいては、乙の賃料不払を理由とする甲の右賃貸借契約解除は権利濫用にあたらない。
土地賃貸借契約解除が権利濫用にあたらないとされた事例。
民法541条,民法1条3項
判旨
土地賃貸借契約における賃料値上げ請求後の契約解除について、事情を総合考慮し権利の濫用に当たらないとした原審の判断を維持したものである。
問題の所在(論点)
土地賃貸借において賃料値上げ請求を巡る紛争が生じている状況下でなされた契約解除が、権利の濫用として無効となるか。
規範
賃貸借契約の解除が権利の濫用(民法1条3項)に該当するか否かは、契約当事者間の信頼関係の破壊の有無、賃料値上げの妥当性、および解除に至る経緯等の諸事情を総合して判断すべきである。
重要事実
被上告人(賃元)は、上告人(賃借人)に対し、本件土地の賃料値上げを請求した。その後、被上告人は本件土地賃貸借契約の解除を主張した。第一審および原審は、当該解除が権利の濫用には当たらないと判断し、かつ被上告人が請求した賃料額を相当なものと認めた。これを不服として、上告人が上告した事案である。
事件番号: 昭和35(オ)53 / 裁判年月日: 昭和37年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法1条3項の権利濫用について、契約解除権の行使が権利の濫用にあたると解すべき根拠となる事実が認められない場合には、当該解除は有効である。原審が確定した事実関係の範囲内では、解除権の行使を不当とする事情がなく、権利濫用には当たらないとした判断を維持した。 第1 事案の概要:本件は契約の解除権行使の…
あてはめ
最高裁は、原審が確定した事実関係および証拠に基づき、本件契約解除が権利の濫用にあたらないとした判断、ならびに賃料値上げ請求額が相当賃料であるとした判断を適法として首肯した。具体的な信頼関係破壊の細部については判決文からは不明であるが、原審の事実認定を前提に、解除の正当性を認めたものである。
結論
本件土地賃貸借契約の解除は権利の濫用にはあたらず、また請求された賃料額も相当であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は非常に簡潔な上告棄却判決であり、具体的な判断基準を新設したものではない。しかし、賃料増額請求と契約解除が絡む事案において、原審の総合的な事実認定を尊重する姿勢を示しており、権利の濫用論を主張する際の事実認定の重要性を示唆する資料として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…
事件番号: 昭和31(オ)627 / 裁判年月日: 昭和33年7月3日 / 結論: 棄却
土地改良法第八条第四項による書類の縦覧期間が法定の二〇日間に満たなくても、満一〇日間縦覧期間が存した以上、同法第一〇条第一項によつてした知事の土地改良区設立認可は当然無効ではない。
事件番号: 昭和36(オ)1350 / 裁判年月日: 昭和37年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法に基づく更新拒絶の正当事由の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、賃貸人の生活維持のために土地を使用する必要性等の個別事情は、正当事由を構成する一判断要素として認められる。 第1 事案の概要:土地の賃貸人である被上告人が、借地期間の満了に伴い更新拒絶を主張して土地の明け渡…
事件番号: 昭和32(オ)454 / 裁判年月日: 昭和37年4月17日 / 結論: 破棄差戻
一 (略)(本件原審判決は、高裁民集一〇巻二号七五頁に登載あり) 二 宗派主管者の承認なしに住職が寺院所有地を賃貸したとき、右寺院は宗派主管者に対して右賃貸借について承認を求める手続をとる義務を負うと解すべき法律上の根拠はない。