後訴における被告の主張及び反訴請求が先に被告が提起した、右反訴と訴訟物を異にする前訴の実質上のむし返しであり、かつ、原判示の事情があるときは、後訴における被告の主張及び反訴請求は、信義則に反し許されない。
後訴における請求及び主張が前訴における請求及び主張との関係で信義則上許されないとされた事例
民法1条2項,民訴法第2篇第1章
判旨
後訴の請求または主張が、前訴における請求または主張の実質上の蒸し返しにすぎない場合には、信義則に照らして許されない。
問題の所在(論点)
前訴の既判力の範囲外であっても、前訴の主張・請求を蒸し返すような後訴の提起や主張は、信義則によって制限されるか。
規範
前訴の確定判決等の既判力が及ばない場合であっても、後訴における請求または主張が前訴のそれと実質的に同一であり、単なる「蒸し返し」といえる特段の事情がある場合には、民事訴訟法上の信義則(民訴法2条参照)に照らし、当該請求または主張は許されない。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、本件本訴および反訴において特定の主張および所有権移転登記抹消登記手続等を求めた。しかし、上告人はかつて前橋地方裁判所において、同一の被上告人に対し、和解無効確認および土地所有権移転登記抹消登記手続を求める訴訟(前訴)を提起していた。本件における上告人の請求および主張は、この前訴における請求および主張の内容を実質的に繰り返すものであった。
事件番号: 昭和44(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和45年4月21日 / 結論: 棄却
貸金債権担保のため不動産の買戻約款付売買がなされその買戻期間が経過した場合において、買戻期間内に、買主が売主の債務の弁済の受領をあらかじめ拒否し、債務額をこえる金額の支払の申出を受けながら買戻を応諾しなかつたなど、原判決認定の事実関係(原判決理由参照)があるときは、売主の右申出が弁済の準備を伴わないため適法な提供の効果…
あてはめ
上告人が本件で提起した本訴および反訴(一部除く)の内容を検討すると、前訴(昭和42年(ワ)第223号事件)において既に争われた和解の無効や登記抹消の主張と実質的に同一である。このように前訴の請求や主張を蒸し返すことは、紛争の一回的解決を図るべき民事訴訟の趣旨に反し、相手方に不当な負担を強いるものである。したがって、本件上告人の請求および主張は、実質上の蒸し返しであることが明らかであり、信義則に照らして許容し得ない評価される。
結論
本件後訴における請求および主張は信義則に反し、許されない。したがって、上告人の請求を排斥した原審の判断は妥当である。
実務上の射程
既判力(民訴法114条)の客観的・時的限界等により、厳密には既判力が及ばない場面(本件のように前訴が和解で終了した場合や、前訴と訴訟物が異なる場合など)において、訴訟上の信義則を用いて不当な蒸し返しを封じるための根拠として活用する。答案上は、まず既判力の抵触を検討し、それが否定される場合に「信義則違反」として構成する際に有用である。
事件番号: 昭和39(オ)24 / 裁判年月日: 昭和40年2月12日 / 結論: 棄却
土地賃貸人において、転借人に対し後日直接賃貸借契約をしてよい意向を示し、それまでの間は転借について暗黙の承諾をしたと見られるような態度をとり、転借人としては、賃貸人の指図に従い、同人の転貸人に対する賃貸借消滅による建物収去土地明渡請求訴訟に協力する態度をとり、賃貸人が勝訴すれば自ら賃借できると考え、同人から明渡を請求さ…
事件番号: 昭和42(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和43年9月24日 / 結論: 棄却
事実の認定の資料に供された証言をした証人に対し偽証の告訴手続がとられたというだけでは、適法な再審事由、したがつて適法な上告理由とはならない。
事件番号: 昭和32(オ)659 / 裁判年月日: 昭和33年5月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利の行使が権利の濫用に該当するか否かは、確定された事実関係に基づき、客観的・総合的な諸事情を照らして判断される。本件においては、原審の認定した事実の範囲内では権利の濫用とは認められないと判断された。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人による本訴請求が権利の濫用にあたると主張して争った。原審は…