本案の終局判決後に取り下げられた旧訴と当事者及び訴訟物を同じくする新訴の提起であつても、旧訴の取下の事情が判示(判文参照)のようなものであつて、当事者の責に帰すべき事由によるものではなく、また、当事者において同一紛争をむし返して訴訟制度をもてあそぶといつたような不当な意図を有していないときは、右新訴の提起は違法とはいえない。
本案の終局判決後に取り下げられた旧訴と当事者及び訴訟物を同じくする新訴の提起が違法でないとされた事例
民訴法237条2項
判旨
本案の終局判決後に訴えを取り下げた者が、同一の訴えを提起することは原則として禁じられるが、再訴禁止の趣旨・目的に反しない特段の事情がある場合には、民訴法262条2項(旧237条2項)による制限を受けない。
問題の所在(論点)
本案の終局判決後に訴えを取り下げた者が再訴を提起した場合において、民訴法262条2項(旧237条2項)による再訴禁止の原則が、裁判所の要請に基づく取下げのような特殊な事情がある場合にも適用されるか。
規範
民事訴訟法262条2項の規定は、終局判決を得た後に訴えを取り下げることにより裁判を徒労に帰せしめたことに対する制裁的趣旨であり、同一紛争の蒸し返しによる訴訟制度の濫用を防止する目的である。したがって、この趣旨・目的に反しないことが明らかである場合には、一律に司法的救済の道を閉ざすべきではなく、再訴は許容される。
重要事実
被上告人は、旧訴において勝訴判決を得たが、その後に訴えを取り下げた。この取下げは、旧訴担当裁判官から「被告に訴状不送達のまま欠席判決をしてしまったため、控訴審で取り消されることは明らかである。一度訴えを取り下げて再度提起してほしい」との要請を受け、これに応じたものであった。その後、被上告人は旧訴と当事者および訴訟物を同じくする本訴を提起した。
あてはめ
被上告人が旧訴を取り下げたのは、裁判所側のミス(訴状不送達での判決)に起因する裁判官の要請を容れたためである。そうであれば、裁判が徒労に帰したのは被上告人の責に帰すべき事由によるものではなく、同一紛争を蒸し返して訴訟制度をもてあそぶような不当な意図も認められない。したがって、本件取下げは再訴禁止規定の制裁的趣旨および濫用防止という目的に反しないことが明らかといえる。
結論
本訴の提起は民事訴訟法262条2項(旧237条2項)に抵触せず、適法である。
実務上の射程
再訴禁止規定(262条2項)の適用範囲を限定した重要判例である。答案では、原則として「当事者・訴訟物・訴えの利益」の三要素が同一であれば再訴禁止に触れると述べた上で、本判例を根拠に「取下げに至る経緯に正当な理由があるか」「制裁を課す必要性があるか」という主観的・実質的側面から射程を外す論法として活用する。
事件番号: 昭和26(オ)361 / 裁判年月日: 昭和26年11月16日 / 結論: 棄却
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後訴における被告の主張及び反訴請求が先に被告が提起した、右反訴と訴訟物を異にする前訴の実質上のむし返しであり、かつ、原判示の事情があるときは、後訴における被告の主張及び反訴請求は、信義則に反し許されない。