判旨
種類債務の給付において、目的物が特定・引渡しされたとしても、その給付が債務の本旨に従わない不完全なものである場合には、買主は完全な給付を催告し、契約解除や損害賠償を請求し得る。
問題の所在(論点)
種類債務において、目的物の特定及び引渡しがなされた場合であっても、その目的物に瑕疵があるなどの不完全な給付であったときに、買主はなお契約解除や代金返還請求等の債務不履行責任を追及できるか。
規範
種類債務(限定的種類債務を含む)において、目的物の提供により特定が生じたとしても、その給付が債務の本旨に従わない不完全なものであれば、買主は追完(完全な給付)の催告、契約解除、損害賠償を請求できる。また、特定した目的物に瑕疵があり、売買の目的を達し得ないときも、買主は契約を解除して代金の返還を求め得る。
重要事実
売主(被上告人)は、買主(上告人)に対し、限定的種類債務に基づき砂利採取機を提供し、特定・引渡しが完了した。しかし、当該製品は不良品であった。その後、売主は当該機械を他者に売却した。買主は、給付が不完全であったとして代金返還等を求めたが、原審は特定・引渡しにより所有権が移転したことを理由に買主の請求を排斥した。
あてはめ
本件売買が限定的種類債務であり、一応の提供・特定があったとしても、その給付内容が債務の本旨に従っているかが重要である。原審は、提供された製品が不良であった事実を認定しながら、その給付が売買の目的を達成し得るものであったか(完全な給付といえるか)を審理していない。給付が不完全であれば、特定後であっても買主は解除権や返還請求権を失わないため、給付の性質に関する審理不尽があるといえる。
結論
特定・引渡しがあったとしても、給付が不完全であれば買主は解除や代金返還を請求できるため、原判決を破棄し、給付が目的を達し得るものであったか否かを審理させるため差し戻す。
実務上の射程
種類物売買における瑕疵ある物の給付が「不完全履行」となるか「瑕疵担保責任(現・契約不適合責任)」となるかの議論において、不完全履行としての構成を認めた判例。答案上は、特定後の追完請求や解除の可否を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)741 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動産の買主が所有権に基づき返還を請求する場合、相手方が即時取得を主張したときは、当該請求には民法193条に基づく回復請求の趣旨も含まれると解するのが相当である。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件物件を買い受けたとして、占有者である上告人(被告)に対し、所有権に基づき物件の返還を求めた。こ…
事件番号: 昭和29(オ)847 / 裁判年月日: 昭和30年8月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】寄託を委任したからといって、当然に寄託関係の終了に伴う返還を受ける権限まで付与されたとは解されず、代理権限なき者への返還は債務不履行を構成する。また、倉庫業者として当然払うべき注意義務を尽くさない限り、受取人に代理権限があると信じたことについて正当な理由があるとはいえない。 第1 事案の概要:債権…