判旨
動産の買主が所有権に基づき返還を請求する場合、相手方が即時取得を主張したときは、当該請求には民法193条に基づく回復請求の趣旨も含まれると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
所有権に基づく返還請求の訴えにおいて、相手方の即時取得が成立し得る場合に、民法193条に基づく回復請求の主張が当然に含まれると解してよいか。
規範
訴状における所有権に基づく返還請求の主張は、相手方が即時取得(民法192条)の要件を充足する場合には、特段の事情のない限り、民法193条に基づく盗品・遺失物の回復請求権を行使する趣旨を包含するものと解釈される。
重要事実
被上告人(原告)は、本件物件を買い受けたとして、占有者である上告人(被告)に対し、所有権に基づき物件の返還を求めた。これに対し、上告人は即時取得を主張して争ったが、原審は被上告人の請求を認容した。上告人は、被上告人が民法193条に基づく回復請求を明示的に主張していないにもかかわらず、これを認めるのは釈明権の懈怠や、主張しない事項に基づく判決(処分権主義違反)にあたると主張して上告した。
あてはめ
被上告人は本件物件を買い受けたと主張して返還を求めている。この主張には、元々の所有権に基づく請求のみならず、仮に相手方が即時取得の要件を具備したとしても、なお民法193条によって所有権を回復しようとする趣旨が含まれていると認めるのが合理的である。したがって、裁判所が回復請求の成否を判断することは、当事者が主張していない事項を判決の基礎としたものとはいえず、釈明義務違反も認められない。
結論
被上告人の返還請求には民法193条に基づく回復請求の趣旨も含まれるため、原判決に手続上の違法はなく、請求は認められる。
実務上の射程
動産の返還請求訴訟において、原告が民法193条を明示的に援用していなくても、所有権の取得原因と占有の事実を主張していれば、裁判所は即時取得に対する抗弁として同条の適用を検討できる。答案上は、即時取得の成否を論じた後、盗品・遺失物の該当性を検討する際、請求の趣旨を合理的に解釈する根拠として本判例の発想を利用できる。
事件番号: 昭和31(オ)714 / 裁判年月日: 昭和33年3月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法占有に基づく所有物件の引渡を求める給付の訴えについては、その請求自体によって訴えの利益が認められる。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人に対し、自己の所有する物件を不法に占有しているとして、その引渡しを求める訴えを提起した。これに対し、上告人の相手方は、本件において訴えの利益を欠く旨を主張し…