あまりにも約款の文言の文理解釈とかけはなれているのみならず、認定事実関係からうかがわれる当事者の真意にそわない原審の約旨の解釈は、到底人をして納得せしめるに足る十分の理由を備えたといえない。
契約書の約款に対する原審の解釈が理由不備であるとされた事例
民訴法395条1項6号
判旨
賃貸借契約における使用目的の制限条項は、単なる動機や建物の所有目的の明示にとどまらず、契約の経緯や文言の性質に照らし、当事者間において重要な契約の要素となる制限として解釈すべきである。
問題の所在(論点)
土地賃貸借契約において、特定の使用目的を定め「これ以外の目的に使用することを得ず」と記載された条項が、単なる契約の動機にすぎないのか、それとも賃借人の使用収益権を制約する重要な契約上の要素(制限)としての効力を有するのか。
規範
契約条項の解釈にあたっては、単なる文理解釈にとどまらず、契約締結に至る経緯や、当該条項が他の標準的な契約書式と比較して特段の有利・不利を伴うものかといった事情を総合的に勘案し、当事者の真意を探究すべきである。特に使用目的を限定し、それ以外の目的での使用を禁ずる旨の明文規定がある場合、それは単なる動機ではなく、契約の重要な要素(制限)としての効力を有するものと解するのが相当である。
重要事実
被上告人(国)が工員宿舎建設のため土地を借り受ける際、他の地主とは標準的な書式で契約していたが、上告人の先代(地主)は土地の譲渡・転貸・原状回復等について難色を示した。折衝の結果、契約書第2条に「工員福利施設のための住宅敷地・道路・公園用地に使用する目的とし、これ以外の目的には使用できない」との限定条項が付され、さらに譲渡禁止や原状回復義務等、地主に有利な特約が付加されて契約が成立した。後に原審は、この第2条を「建物を所有することを確認したのみで、工員宿舎という点は動機にすぎない」と解した。
事件番号: 昭和36(オ)378 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
経済的変動により賃料額が不相当となつたときは、協定のうえこれを増減することができるし、期間を更新することもできる旨の約款があつても、その賃貸借を一時使用のためのものと認定できないことはない。
あてはめ
本件条項は、地主が当初の契約条件に同意せず、交渉を重ねた末に、使用目的を厳格に限定し「これ以外に得ず」という禁止規定を明記することで成立したものである。また、譲渡禁止や解除権の制限、原状回復等の他条項とあわせ、地主側の利益を保護する意図で付加されたことは明らかである。これらを単なる「建物所有目的の明示」や「動機」とみるのは、文言の文理に反するのみならず、難色を示す地主を説得して合意に至った当事者の真意にも沿わない。したがって、本件の使用目的制限は契約の重要な要素といえる。
結論
本件の使用目的制限条項は重要な契約の要素であり、これに反する使用は契約違反を構成し得る。原判決がこれを単なる動機として排斥したことは理由不備の違法があり、破棄を免れない。
実務上の射程
契約書の文言が「動機」か「要素(制限)」かが争われる場面(借地条件の変更や解除の成否等)で、契約交渉過程の事実認定がいかに重要かを示す判例。司法試験では、契約の解釈において文理・経緯・目的を考慮して規範(特約の効力)を導く際の論理構成として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)874 / 裁判年月日: 昭和36年8月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地借家法(旧借地法)の適用を排除する「一時使用のための賃貸借」に該当するか否かは、契約の目的、賃貸借の期間、建物の種類、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:上告人と被上告人との間で本件宅地の賃貸借契約が締結された。原審は、当該契約がなされた背景、建物の利用目的、およ…
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和33(オ)1024 / 裁判年月日: 昭和35年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地所有者が土地の使用を容認していたとはいえない状況において、当該土地の明渡し等を求める請求は、特段の事情がない限り権利の濫用(民法1条3項)には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(被告)が本件土地を使用していたところ、被上告人ら(原告)が土地所有権に基づき本訴請求(明渡し等)を提起した。上告…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…