判旨
不法占有者に対する明渡請求等において、被告の占有が継続している事実が認定される以上、被告による「占有の代理」の主張は、それが単なる名称の変更(通称の使用)に過ぎず、占有の主体自体が別人格であることを意味しない場合には、占有の断絶を理由とする抗弁として採用し得ない。
問題の所在(論点)
不法占有の主体を認定する際に、被告が通称や別個の組織名を名乗っている場合、それが独立した占有主体として認められ、被告個人の占有が否定されるか。
規範
占有の主体を認定するにあたっては、その名称(通称等)の如何にかかわらず、実質的に占有を継続している主体を特定すべきである。仮に占有者が別の名称を称したとしても、それが単なる通称の変更に過ぎず、客観的な占有の事実に変更がないのであれば、占有の継続性は失われない。
重要事実
上告人(原告)が被上告人(被告)に対し、土地の不法占有を理由として明渡し等を求めた事案。被上告人は、当該土地の占有が「某」という名称の主体によるものであり、自己の占有ではない旨(または代理占有である旨)を主張して、占有の主体性を否定した。原審は、当該名称が被上告人の通称に過ぎないと判断し、占有の事実を肯定した。
あてはめ
被上告人が主張する「某」という名称は、証拠等に照らせば被上告人の通称を意味するものに過ぎないと解される。そうである以上、被上告人が当該通称を用いて土地を占有していた事実は、被上告人自身が占有を継続していることを意味する。したがって、占有主体の変更を理由とする被上告人の主張(違法な占有の否定)には理由がない。
結論
被上告人の占有の事実は認められ、占有主体の変更に関する主張は排斥されるため、原審の判断は正当である。上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和43(行ツ)132 / 裁判年月日: 昭和44年6月26日 / 結論: 棄却
町議会議員選挙において、「D英雄」「D秀男」「D英男」「D英夫」および「D(平仮名)ひでお」と記載された投票は、候補者中にD八州男およびD寅一なる者がある場合においても、候補者C英男が、D部落においてD要の子として出生し、以後養子縁組により改姓するに至るまで二十余年間D姓を称し、また、要はもと町長を勤めた知名士で、候補…
不法占有を理由とする明渡請求において、被告が法人格のない団体名や通称を持ち出して占有主体の不一致を主張する際の反論として有用。実質的な占有主体が変わっていないことを論証する際の規範として機能する。
事件番号: 昭和32(オ)740 / 裁判年月日: 昭和32年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙人が候補者の氏名を誤記した場合であっても、候補者の姓と名の混記ではなく、単なる誤記と認められるときは有効投票として扱うべきである。また、不在者投票や代理投票に一部違法があっても、直ちに選挙全体の無効や当選無効の原因とはならない。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、当選人田中Cの得票の有…
事件番号: 昭和41(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
一 候補者の父の名に合致する記載のある投票でも、右父の名は代々襲名されたもので、現に候補者の家の家号として取り扱われ、候補者自身の通称とも認められるときは、これを右候補者に宛てられた有効投票と解すべきである。 二 赤のマヂツクインキで候補者の氏名を記載した投票は無効でない。
事件番号: 昭和31(オ)325 / 裁判年月日: 昭和31年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】普通地方公共団体の選挙管理委員会委員長は、地方自治法に基づき、その権限に属する事務の一部として、委員会の書記等の吏員に対し訴訟代理権限を委任し(いわゆる指定代理人の選任)、訴訟行為を行わせることができる。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人である選挙管理委員会との訴訟において、原審で委員会の指定…
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…