判旨
普通地方公共団体の選挙管理委員会委員長は、地方自治法に基づき、その権限に属する事務の一部として、委員会の書記等の吏員に対し訴訟代理権限を委任し(いわゆる指定代理人の選任)、訴訟行為を行わせることができる。
問題の所在(論点)
普通地方公共団体の選挙管理委員会委員長が、当該委員会の吏員に対し、弁護士ではない者への訴訟代理権の授与(指定代理人の選任)を行うことができるか。地方自治法153条1項等の事務委任規定の解釈が問題となる。
規範
地方自治法187条2項により、選挙管理委員会の委員長は当該委員会の代表者である。また、同法193条・153条1項に基づき、委員長はその権限に属する事務の一部を当該委員会の吏員に委任し、または臨時に代理させることができる。いわゆる指定代理人の選任も本条に基づく事務の委任に含まれると解すべきである。明文で指定代理を認める他法の規定がないからといって、これを禁止するものと即断することはできない。
重要事実
上告人は、被上告人である選挙管理委員会との訴訟において、原審で委員会の指定代理人として訴訟行為を行った古木某に訴訟代理権限がない旨を主張した。記録上、古木某は当該委員会の書記であり、委員長からの「訴訟指定代理状」によって選任されていた。
あてはめ
委員長が本来の職務を遂行しつつ、専門的・効率的に選挙事件の訴訟事務を遂行するためには、委員会の吏員に訴訟行為を行わせることが合理的である。本件において、指定代理人とされた古木某は委員会の書記という「吏員」の立場にあり、委員長から適切に代理権を委任されている(訴訟指定代理状の存在)。したがって、同法153条1項等の規定に基づき、適法な代理権限が付与されているといえる。
結論
地方自治法の事務委任規定に基づき、選挙管理委員会委員長は吏員を指定代理人に選任できる。したがって、本件指定代理人の訴訟代理権限に欠缺はなく、訴訟行為は有効である。
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…
実務上の射程
行政主体の代表者が、弁護士法72条等の制限にかかわらず、内部職員に訴訟行為を代理させる「指定代理」の根拠を地方自治法の事務委任規定に求めた点に意義がある。答案上は、行政庁の訴訟代理権限が争点となった際、明文の指定代理規定がなくても、一般的な権限委任規定を根拠に指定代理を認める論理として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)1069 / 裁判年月日: 昭和32年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙管理執行の違法が広範囲にわたり、不正投票の総数も不明で選挙全体の自由公正が著しく害された場合には、当選人の得票数と無効票数を具体的に対比することなく、公職選挙法205条1項に基づき選挙を無効とすべきである。 第1 事案の概要:町議会議員選挙において、特定の投票所の投票立会人全員及び受付係が、少…
事件番号: 昭和41(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和41年11月22日 / 結論: 棄却
一 候補者の父の名に合致する記載のある投票でも、右父の名は代々襲名されたもので、現に候補者の家の家号として取り扱われ、候補者自身の通称とも認められるときは、これを右候補者に宛てられた有効投票と解すべきである。 二 赤のマヂツクインキで候補者の氏名を記載した投票は無効でない。
事件番号: 昭和33(オ)405 / 裁判年月日: 昭和33年8月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】補充選挙人名簿の調製手続に重大な違法があり同名簿が無効となる場合、たとえ基本選挙人名簿が有効であっても、その選挙区における選挙は全部無効となる。また、この違法は選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるものとして、公職選挙法205条1項に基づき選挙無効の原因となる。 第1 事案の概要:町議会議員選挙にお…
事件番号: 昭和32(オ)762 / 裁判年月日: 昭和32年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不法占有者に対する明渡請求等において、被告の占有が継続している事実が認定される以上、被告による「占有の代理」の主張は、それが単なる名称の変更(通称の使用)に過ぎず、占有の主体自体が別人格であることを意味しない場合には、占有の断絶を理由とする抗弁として採用し得ない。 第1 事案の概要:上告人(原告)…