判旨
売買契約の動機や縁由が明確でない場合であっても、契約書の作成や譲渡の承諾といった客観的事実が認められる限り、売買契約の成立を肯定することができる。
問題の所在(論点)
売買契約の動機や縁由が不明瞭である場合、または契約締結時に当事者が身体拘束を受けていた場合において、売買契約の成立を否定すべきか(民法555条の成否)。
規範
売買契約(民法555条)の成立には、当事者間の合意という客観的事実が認められれば足り、その契約を締結するに至った動機や縁由が完全に判明していることまでは必要とされない。
重要事実
上告人は、拘留中に作成された売買契約書(甲5号証)の有効性を争い、被上告人が本件建物を時価より割安に買い受ける動機や他者との紛争を有利にするために他人名義で登記する理由がないこと、また売買代金の交付が不自然であることを主張した。しかし、上告人は釈放後に追加契約書(甲6号証)を作成し、本件建物を被上告人に譲渡することを承諾していた。
あてはめ
本件では、当初の契約書作成時に上告人が拘束されていたとしても、釈放後に追加契約書を作成して譲渡を承諾している。このような客観的な承諾の事実がある以上、売買の動機や縁由に不透明な点があり、代金支払の態様に疑問の余地があったとしても、売買契約の成立を認めるのが相当である。したがって、被上告人は本件建物の所有権を取得したといえる。
結論
売買契約は有効に成立しており、被上告人の所有権に基づく建物明渡請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
契約成立の成否が争われる場面において、動機や不自然な事情(縁由)の指摘よりも、契約書作成や事後の承諾といった客観的な証拠・事実が優先されることを示す事案である。民法555条の成立要件(合意)の認定における事実認定のあり方として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)517 / 裁判年月日: 昭和34年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】消費貸借契約が公序良俗に反して無効とされるか否かは、契約成立に至るまでの詳細な経緯を総合的に考慮して判断される。 第1 事案の概要:本件は消費貸借契約の成否およびその有効性が争われた事案である。上告人は、本件消費貸借契約が成立した事実はないと主張し、仮に成立していたとしてもその経緯から民法90条に…