判旨
投票の管理執行が法律の明文に違反していない場合であっても、投票の自由公正が著しく阻害されたと認められるときは、当該投票を無効とすべきである。
問題の所在(論点)
投票の管理執行に直接的な法令違反が認められない場合において、投票の自由公正を阻害する事情が存在することを理由に投票を無効とすることができるか。
規範
投票の管理執行に関する手続が法律の明文に違反しない場合であっても、その実施過程において投票の自由公正が著しく阻害されたと認められる特段の事情がある場合には、当該投票は無効となる。
重要事実
分町に関する投票において、上告人らは以下の事実を主張して投票の無効を訴えた。(1)区民が分町賛成者側による部落申合規約に署名させられたこと、(2)通常より代理投票が多用されたこと、(3)投票所内で投票内容を見せ合ったこと。原審は、(1)は自由公正を奪う内容ではなく、(2)は手続上の違法がなく、(3)は事実として認められないと判断した。
あてはめ
(1)の規約署名については、その内容が投票の自由を奪うものとは認められず、(2)の代理投票については、その件数が多いとしても手続上の適法性が保たれている。また、(3)の相互開示の事実は証拠上認められない。したがって、本件投票の過程において、自由公正が「著しく阻害された」と評価すべき客観的事態は認められない。
結論
本件投票は有効であり、投票を無効とすべきとの上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
選挙無効訴訟や住民投票の効力が争われる事案において、法令上の形式的瑕疵がない場合でも「自由公正の著しい阻害」という実質的基準によって無効を主張し得る余地を認めた判例である。答案上は、実質的な不当性が極めて高い場合の予備的な無効事由として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)370 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票包を開いて改めて封印した事実や参観人が柵を乗り越えて入場した事実は、直ちに公職選挙法上の選挙規定違反とはいえず、また選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるとも認められない。 第1 事案の概要:本件選挙において、一度封印された投票包を開封した上で改めて封印し直した事実、および選挙の参観人が会場の柵…
事件番号: 昭和32(オ)1126 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票立会人に候補者の親戚や選挙運動員を選任したとしても、直ちに選挙の公正を著しく害するとはいえない。また、注文外の投票用紙の印刷等の事態があっても、具体的な不正の証拠がなく、選挙の結果に異動を及ぼすおそれがない限り、選挙を無効とはしない。 第1 事案の概要:上告人は、市町村議会等の選挙において、(…
事件番号: 昭和32(オ)461 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】部落(地域組織)による候補者の推薦や選挙運動は直ちに違法ではなく、個別の運動に違法があっても、それが公職選挙法205条1項の「選挙の規定」違反として選挙無効の原因になるものではない。 第1 事案の概要:市議会議員選挙において、各地区(部落)の有志や各種団体幹部が協議し、地域の利益擁護を目的に地域別…