判旨
判決において主張された論旨に対して何らかの判断が示されている以上、その内容が仮に誤っていたとしても、民事訴訟法上の再審事由である「判断の遺脱」には当たらない。
問題の所在(論点)
上告審判決が上告論旨を排斥する判断を示している場合に、その判断内容の誤りを理由として民事訴訟法上の「判断の遺脱」(現行法496条1項13号、旧法420条1項9号等参照)を主張できるか。
規範
民事訴訟法上の再審事由としての「判断の遺脱」とは、裁判所が当事者の申し立てた主張や論旨に対して全く判断を示さなかった場合を指す。したがって、判決において論旨を排斥する旨の判断が示されているのであれば、その判断内容の当否は判断遺脱の有無とは無関係である。
重要事実
再審原告は、上告審が第二審判決の審理不尽に関する上告論旨に対し、実態を明らかにする判断を欠いているとして再審の訴えを提起した。上告審判決では、第二審が認定した業務実態(薪炭卸売業者の営業所長としての送金決済等の事実)を引用し、審理不尽をいう論旨を採り得ないものとして排斥していた。
あてはめ
本件上告審判決は、再審原告が主張した審理不尽の論旨に対し、第二審が認定した具体的事実(営業所の開設や代金決済の態様)を基に、業務実態は明らかにされていると認定して論旨を排斥している。これは論旨に対して明確に判断を与えたものといえる。仮にその判断内容が誤っていたとしても、それは判断の内容自体の当否の問題にすぎず、判断自体がなされなかったことにはならない。
結論
本件再審の訴えには再審事由である判断遺脱は認められないため、棄却(本件では却下)されるべきである。
実務上の射程
再審事由としての「判断の遺脱」を主張する際、実質的に判決内容の不当性を争うことは許されないことを示す射程を持つ。答案上は、再審事由の存否が問われる場面で、裁判所が何らかの理由を付して排斥している限り、その理由の合理性を問わず判断遺脱には該当しないと論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)514 / 裁判年月日: 昭和31年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が特定の表現を用いた判示を行ったとしても、直ちに予断をもって裁判したとはいえず、証拠の採否や事実認定は原審の裁量に属する。 第1 事案の概要:上告人が、原審の判決文中の特定の記載内容を捉えて、裁判所が予断をもって裁判を行ったと主張し、併せて原審における証拠申出の採否、証拠の取捨選択、および事…