判旨
裁判所は当事者の具体的権利関係を離れて、抽象的に法律等が憲法に適合するか否かを決定する権限を有しない。
問題の所在(論点)
裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」に当たらない抽象的な法律の違憲審査を、裁判所に対して求めることができるか。
規範
我が国の現行法制下における裁判所は、当事者の具体的権利関係(具体的な法律上の争訟)を離れて、法律等が憲法に適合するかしないかを抽象的に決定する権限を有しない(付随的違憲審査制)。
重要事実
原告が、自己の具体的な権利義務関係を前提とすることなく、売春防止法が憲法に違反して無効であることの確認を求めて、最高裁判所に直接訴えを提起した事案。
あてはめ
本件訴訟において原告は、自身の具体的な権利に関係なく、単に売春防止法の違憲性のみを主張し、その無効確認を求めている。これは具体的な権利義務に関する紛争を解決するための手段としての違憲審査を求めるものではなく、法律それ自体の合憲性を問う抽象的な訴えであるといえる。
結論
本件訴えは、具体的な権利関係に基づかない抽象的な法律等の無効確認を求めるものであり、不適法として却下される。
実務上の射程
司法権(憲法76条1項、裁判所法3条1項)の限界を示す重要判例である。司法試験においては、抽象的な確認訴訟や、具体的事件性を欠く訴えの適法性を論じる際、「具体的権利義務に関する紛争が存在しない」ことを指摘するための論拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)665 / 裁判年月日: 昭和31年2月17日 / 結論: 棄却
特別区長選任無効確認を求める住民の訴は、その具体的権利義務に関係がないから不適法である。
事件番号: 昭和27(マ)148 / 裁判年月日: 昭和28年4月15日 / 結論: 却下
憲法第八一条は、最高裁判所が違憲審査を固有の権限とする始審にして終審である憲法裁判所たる性格をも併有すべきことを規定したものではない。
事件番号: 昭和27(マ)127 / 裁判年月日: 昭和28年4月1日 / 結論: 却下
わが現行法制の下にあつては、たゞ純然たる司法裁判所だけが設置せられているのであつて、いわゆる違憲審査権なるものも、下級審たると上級審たるとを問わず、司法裁判所が当事者に存する具体的な法律上の争訟について審判をなすため必要な範囲において行使せられるに過ぎない。すなわち憲法八一条は単に最高裁判所が司法裁判所として右違憲の審…
事件番号: 昭和31(オ)816 / 裁判年月日: 昭和35年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事判決の既判力は当事者以外には及ばず、行政庁が確定判決と異なる判断をしても直ちに違法とはならない。また、買収処分の後の売渡処分の違法は、買収処分自体の効力に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人は、農地買収処分等に関して、既になされた民事判決の判断内容と行政庁の判断が異なること、不動産登記…