憲法第八一条は、最高裁判所が違憲審査を固有の権限とする始審にして終審である憲法裁判所たる性格をも併有すべきことを規定したものではない。
日本国憲法第八一条と最高裁判所の性格
憲法81条
判旨
日本国憲法の下では、司法裁判所が具体的な法律上の争訟を審判する過程においてのみ違憲審査権を行使できるのであり、具体的争訟を離れて抽象的に法律等の合憲性を審議する憲法裁判所としての権限は認められない。
問題の所在(論点)
日本国憲法81条の下で、最高裁判所は具体的な法律上の争訟を離れて、法令等の合憲性を抽象的に審理・判断する「憲法裁判所」としての権限を有するか。すなわち、抽象的違憲審査の訴えの適法性が問題となった。
規範
現行の司法制度は、具体的事件の解決を目的とする司法裁判所のみを設置するものであり、憲法81条も司法裁判所が具体的な法律上の争訟について審判をなすために必要な範囲で違憲審査権を行使することを規定したものである。したがって、具体的争訟を伴わない抽象的な違憲審査の訴えは、現行法制上認められない不適法なものといえる。
重要事実
原告(上告人)は、最高裁判所が第一審かつ終審として、一切の法令等の憲法適合性を審判すべき「憲法裁判所」としての性格を併せ持つことを前提として、本件訴訟(具体的な事件の詳細は判決文からは不明)を直接、最高裁判所大法廷に提起した。
事件番号: 昭和27(マ)127 / 裁判年月日: 昭和28年4月1日 / 結論: 却下
わが現行法制の下にあつては、たゞ純然たる司法裁判所だけが設置せられているのであつて、いわゆる違憲審査権なるものも、下級審たると上級審たるとを問わず、司法裁判所が当事者に存する具体的な法律上の争訟について審判をなすため必要な範囲において行使せられるに過ぎない。すなわち憲法八一条は単に最高裁判所が司法裁判所として右違憲の審…
あてはめ
最高裁判所は純然たる司法裁判所であり、当事者間に具体的な法律上の争訟が存在することが裁判権行使の前提となる。本件訴えは、現行法制上認められていない憲法裁判所を想定し、その権限に属する事案として直接提起されたものであるが、具体的争訟性を欠くため、司法権の限界を超えるものといえる。
結論
本件訴えは現行法制上認められない不適法な訴えであり、却下を免れない。
実務上の射程
司法制度の基本構造(付随的違憲審査制)を示す最重要判例である。行政訴訟や民事訴訟において、具体的権利義務の争いがない状態で法令の無効のみを求める訴えが提起された場合、本判決を引用して「具体的争訟性」の欠如(憲法81条の限界)を論じ、訴えを不適法とする際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和24(オ)318 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】衆議院議員総選挙の無効を求める訴えにおいて、その後に衆議院が解散された場合には、当該選挙による効力は将来に向かって失われるため、選挙無効を求める法律上の利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人らは、昭和24年1月23日に施行された衆議院議員総選挙(長野県第1区ないし第4区)について、選挙人または…
事件番号: 昭和28(オ)856 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
地方公共団体の議会の解散請求署名簿の署名の効力に関する訴訟において、議会は当事者能力を有しない。
事件番号: 昭和30(オ)96 / 裁判年月日: 昭和35年6月8日 / 結論: 棄却
衆議院解散の効力は、訴訟の前提問題としても、裁判所の審査権限の外にある。