衆議院解散の効力は、訴訟の前提問題としても、裁判所の審査権限の外にある。
衆議院解散の効力に関する裁判所の審査権限。
憲法76条,憲法81条,憲法7条,憲法69条,裁判所法3条1項
判旨
直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、法律上の争訟として裁判が可能であっても、司法審査の対象外となり、政治部門の判断や国民の政治判断に委ねられる(統治行為論)。衆議院の解散はこれに該当し、裁判所はその有効無効を審査する権限を有しない。
問題の所在(論点)
衆議院の解散のような高度に政治性のある国家行為について、裁判所は憲法81条に基づく違憲審査権を行使し、その有効無効を判断することができるか。いわゆる「統治行為」としての司法審査の限界が問われた。
規範
司法権の行使には憲法の本質に内在する制約がある。直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為については、法律上の争訟となり有効無効の判断が可能であっても、裁判所の審査権の外にあり、政治部門(政府・国会)の判断に委ねられ、最終的には国民の政治判断に委ねられるべきである。この理は、当該行為が訴訟の前提問題として主張される場合であっても同様である。
重要事実
内閣が憲法7条に基づき衆議院を解散した(いわゆる「抜き打ち解散」)。衆議院議員であった上告人は、同解散が憲法69条に該当しないにもかかわらず行われたものであり違憲無効であると主張。解散が無効であれば議員の身分を失わないはずであるとして、任期満了までの歳費の支払いを求めて国を提訴した。
事件番号: 昭和27(マ)148 / 裁判年月日: 昭和28年4月15日 / 結論: 却下
憲法第八一条は、最高裁判所が違憲審査を固有の権限とする始審にして終審である憲法裁判所たる性格をも併有すべきことを規定したものではない。
あてはめ
衆議院の解散は、国会の主要な一翼である衆議院の機能を一時閉止し、総選挙を通じて新内閣成立の機縁をなすもので、国法上の意義が重大である。また、内閣が重要政策に関し国民の総意を問うために行われるものであり、政治上の意義も極めて重大である。したがって、解散は極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為といえ、その有効無効を審査することは司法裁判所の権限外である。政府が本件解散を憲法7条に基づき適法に行ったとする見解をとっている以上、裁判所はその見解を否定して無効とすることはできない。
結論
衆議院の解散は司法審査の対象外であり、裁判所は解散の有効性を前提として判断せざるを得ない。したがって、解散を無効と主張して歳費を求める上告人の請求は排斥される。
実務上の射程
統治行為論のリーディングケース。答案では、裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に該当する場合であっても、三権分立の原理からくる「内在的制約」として審査が及ばない例外として位置づける。ただし、解釈の前提として、一見して明白に違憲無効である場合にまで審査を否定するかについては、本判決の文言からは慎重に検討を要する。
事件番号: 昭和25(オ)175 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方議会の解散賛否投票の効力を争う訴訟において、当該議会議員の任期が満了した場合には、もはや当該訴訟の判決を求める訴えの利益は失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和23年7月7日に実施された石川県江沼郡a町議会の解散賛否投票の効力を争い、当該投票の効力に関する被上告人の訴願裁決の取消しを求め…
事件番号: 昭和27(マ)127 / 裁判年月日: 昭和28年4月1日 / 結論: 却下
わが現行法制の下にあつては、たゞ純然たる司法裁判所だけが設置せられているのであつて、いわゆる違憲審査権なるものも、下級審たると上級審たるとを問わず、司法裁判所が当事者に存する具体的な法律上の争訟について審判をなすため必要な範囲において行使せられるに過ぎない。すなわち憲法八一条は単に最高裁判所が司法裁判所として右違憲の審…
事件番号: 昭和28(オ)106 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】衆議院議員総選挙の当選無効を求める訴訟において、当該選挙により選出された議員で組織された衆議院が解散された場合には、当選の結果取得する議員たる身分が失われるため、訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は、昭和27年10月1日に行われた衆議院議員総選挙において当選した被上告人の当選無効を求…