判旨
衆議院議員総選挙の当選無効を求める訴訟において、当該選挙により選出された議員で組織された衆議院が解散された場合には、当選の結果取得する議員たる身分が失われるため、訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
衆議院議員総選挙の当選無効を求める訴訟の継続中に、衆議院が解散された場合、当該当選の効力を争う「法律上の利益」は存続するか。
規範
行政訴訟における訴えの利益(法律上の利益)は、判決によって原告が受けるべき具体的な権利利益の回復が可能な場合に認められる。選挙訴訟においても、争われている当選の効力に基づく身分が、事後の客観的な事由(議会の解散等)によって将来に向かって完全に失われた場合には、特段の事情のない限り、当該当選の効力を争う実益は失われる。
重要事実
上告人は、昭和27年10月1日に行われた衆議院議員総選挙において当選した被上告人の当選無効を求めて提訴した。しかし、上告審係属中の昭和28年3月14日、当該総選挙により選出された議員で組織された衆議院が解散された。
あてはめ
衆議院が解散されたことは公知の事実である。この解散により、当該総選挙の結果として当選人が取得した衆議院議員たる身分は、解散の時点をもって全面的に失われたものといえる。そうであれば、当選の効力の有無を争い、その無効を確定させたとしても、既に失われた身分を回復する余地はなく、上告人が本件訴訟によって得られる具体的な法的利益は存在しないと解される。
結論
衆議院の解散により当選人の議員たる身分が失われたため、当選無効を求める法律上の利益も消滅した。したがって、訴えは却下されるべきである(判決文上は「請求を棄却」とあるが、現在の訴訟法上の扱いは訴え却下相当)。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(オ)318 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】衆議院議員総選挙の無効を求める訴えにおいて、その後に衆議院が解散された場合には、当該選挙による効力は将来に向かって失われるため、選挙無効を求める法律上の利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人らは、昭和24年1月23日に施行された衆議院議員総選挙(長野県第1区ないし第4区)について、選挙人または…
選挙訴訟や資格確認訴訟において、任期満了や解散等によって対象となる地位・身分が消滅した場合に、訴えの利益が失われるとする一般原則を示す射程を有する。司法試験においては、処分性や原告適格と並び、訴えの利益の消滅事由(事情判決との区別)を検討する際の基礎的な論理として用いる。
事件番号: 平成11(行ツ)16 / 裁判年月日: 平成12年11月10日 / 結論: 破棄自判
衆議院議員選挙を無効とする判決を求める訴えは、衆議院の解散によって、その法律上の利益を失う。
事件番号: 昭和26(オ)420 / 裁判年月日: 昭和26年12月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】選挙による公務員の任期が満了した場合には、当選の効力に関する訴願裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅する。また、異議申立てがないにもかかわらず、選挙日から長期間経過後に選挙管理委員会が当選無効を決定することは権限を逸脱した無効な処分である。 第1 事案の概要:昭和22年4月の村長選挙において、選挙…
事件番号: 昭和26(オ)346 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】村議会の解散賛否投票の効力を争う訴えにおいて、当該議会議員の任期が満了した場合には、もはや判決を求める訴えの利益(実益)は失われる。 第1 事案の概要:徳島県美馬郡a村において、昭和25年9月7日に村議会解散の賛否を問う投票が行われた。被上告人は、この投票の効力に関する選挙管理委員会の異議決定およ…