判旨
選挙による公務員の任期が満了した場合には、当選の効力に関する訴願裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅する。また、異議申立てがないにもかかわらず、選挙日から長期間経過後に選挙管理委員会が当選無効を決定することは権限を逸脱した無効な処分である。
問題の所在(論点)
1. 選挙による公務員の任期が満了した場合に、当選の効力を争う訴えの利益は認められるか。2. 選挙人等からの異議申立てがないにもかかわらず、選挙管理委員会が職権で当選無効を決定できるか。
規範
1. 行政訴訟における訴えの利益は、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が存在する場合に認められるが、任期満了等によりその地位を回復する可能性が失われた場合には消滅する。2. 選挙管理委員会が当選の効力を無効とする権限は、法律上の異議申立て期間内に適法な申立てがあった場合に限られ、その範囲を超えた決定は重大かつ明白な瑕疵として当然無効となる。
重要事実
昭和22年4月の村長選挙において、選挙会により当選人が定められたが、約2年8ヶ月経過した昭和24年12月に、村選挙管理委員会が突如として当該当選人の当選無効を決定し、被上告人を繰上当選とした。これに対し県選挙管理委員会(上告人)が訴願裁決で繰上当選等を取り消したため、被上告人がその裁決の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟継続中に当該村長の任期は満了した。
あてはめ
1. 本件村長選挙は昭和22年に施行されたものであり、地方自治法等の規定によれば、何人が正当な当選人であるかを問わず既に任期が満了している。したがって、裁決を取り消して当選人の地位を確定させる実益は失われている。2. 選挙管理委員会が一度定まった当選を無効にできるのは、適法な異議申立てがあった場合に限定される。本件のように選挙から2年以上経過した後に、申立てなくしてなされた無効決定は権限を逸脱しており、当然無効である。ゆえに、この無効決定を前提とした被上告人の繰上当選も違法であり、これを取り消した本件裁決は結論において正当である。
結論
本件訴えは、任期満了により訴えの利益を欠くため棄却すべきであり、また請求自体も本来理由がない。原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却する。
事件番号: 昭和25(オ)136 / 裁判年月日: 昭和26年2月20日 / 結論: 棄却
当選人決定告示の後繰上補充があつても、当初の当選の効力に関する訴訟の判決にあたり、その事実を考慮すべきではない。
実務上の射程
訴えの利益に関する「時の経過による消滅」の典型例として、選挙訴訟等において引用される。行政庁の職権取消し権限の限界(法律の根拠と期間制限の重要性)を示唆する事案としても位置づけられる。
事件番号: 昭和26(オ)346 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】村議会の解散賛否投票の効力を争う訴えにおいて、当該議会議員の任期が満了した場合には、もはや判決を求める訴えの利益(実益)は失われる。 第1 事案の概要:徳島県美馬郡a村において、昭和25年9月7日に村議会解散の賛否を問う投票が行われた。被上告人は、この投票の効力に関する選挙管理委員会の異議決定およ…
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…