当選人決定告示の後繰上補充があつても、当初の当選の効力に関する訴訟の判決にあたり、その事実を考慮すべきではない。
当選人決定告示後の繰上補充と当初の当選効力に関する訴訟の判決
地方自治法(公職選挙法施行前のもの)66条,地方自治法(公職選挙法施行前のもの)56条3項
判旨
当選の効力に関する争訟の対象は、選挙会等の当時の当選決定の当否であり、その後の事後的な繰上補充の事実は考慮されない。また、無効投票の認定や事実認定の立証責任は、証拠の合理的な評価と提出状況に基づく。
問題の所在(論点)
1.当選無効訴訟において、訴訟係属中に生じた繰上補充の結果を考慮して当選の有効性を判断すべきか。2.特定の曖昧な記載がある投票の有効性をどのように判断すべきか。
規範
当選の効力に関する争訟(公職選挙法203条等、当時の地方自治法)は、選挙会が当選人を決定した当時、又は選挙管理委員会が当選人の氏名を告示した当時の当選人の当否を判断するものである。したがって、当初の当選決定の正否を争う訴訟において、訴訟継続中に生じた欠員補充(繰上補充等)といった事後的事実は、その訴訟の対象に含まれず、判断の基礎として考慮すべきではない。
重要事実
地方議会議員選挙において当選人とされたAに対し、選挙人Bが当選無効を求めて提訴した。訴訟係属中、当初の当選人の一人が辞職し、法定の繰上補充が行われた。Aは、繰上補充の結果、次点者との得票差が拡大したため、仮に数票の無効投票があったとしても自身の当選の効力に影響しない(当選を失わない)と主張した。また、特定の投票(「F浅次郎」の振仮名等)の有効性についても争われた。
事件番号: 昭和26(オ)420 / 裁判年月日: 昭和26年12月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】選挙による公務員の任期が満了した場合には、当選の効力に関する訴願裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅する。また、異議申立てがないにもかかわらず、選挙日から長期間経過後に選挙管理委員会が当選無効を決定することは権限を逸脱した無効な処分である。 第1 事案の概要:昭和22年4月の村長選挙において、選挙…
あてはめ
1.当選訴訟の本質は「当初の当選決定時」の適否を事後的に審査することにある。本件では、選挙会における当初の決定が争点であり、その後に生じた繰上補充は別個の当選訴訟の対象とはなり得ても、本件訴訟の判断を左右するものではない。2.「F浅次郎」の振仮名につき、第四字が「ア」とも「マ」とも読める筆跡であっても、文脈上「ア」と読むのが自然であり、複数の候補者への投票と混同し得る以上、原審が無効と判断したことは合理的である。「オ、サ」等の判読し難い記載も、検証の結果、有効な意思表示と認められない。
結論
訴訟継続中の繰上補充等の事実は当選無効訴訟の判断に影響を及ぼさない。原審の証拠評価及び事実認定に違法はなく、Aの上告を棄却する。
実務上の射程
選挙訴訟における「争訟の対象」を画定する重要な規範である。行政訴訟の一種としての客観訴訟において、事情判決のような事後的事情の考慮がどこまで許されるかを検討する際の基準となる。答案上は、事後的な事情(辞職や繰上補充)によって「訴えの利益」や「当選の効力」を議論する場面で、本判例を引用して判断基準時を固定する使い方が有効である。
事件番号: 昭和28(オ)1286 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。 第1 事案の概要:本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏…
事件番号: 昭和35(オ)871 / 裁判年月日: 昭和35年12月2日 / 結論: 棄却
a組が候補者A久市が代表取締役である会社名であるとしても、他の候補者A道徳の氏名を明記しa組を附記した投票は右A久市に対する有効投票とはいえない。
事件番号: 昭和35(オ)1467 / 裁判年月日: 昭和36年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条1項にいう「選挙の規定」とは主として選挙の管理執行に関する規定を指し、当選人決定の際の被選挙権の有無の判断に誤りがある場合は、選挙無効の訴えの対象にはならない。 第1 事案の概要:本件選挙において、選挙会は訴外Dに被選挙権がないものと判断し、同人を当選人と定めなかった。上告人は、…