判旨
選挙の投票において、特定の候補者の氏名が正確に記載されていない場合であっても、諸般の事情を考慮して当該候補者に対する投票であると合理的に認められるときは、これを有効投票と解すべきである。
問題の所在(論点)
不正確な記載がある投票について、特定の候補者に対する有効投票として認めるための判断基準、および諸般の事情を考慮することの可否が問題となる。
規範
投票の有効性の判断にあたっては、投票用紙に記載された文字のみに拘泥せず、客観的な諸般の事情を総合的に考慮し、選挙人の真意を合理的に推認して、特定の候補者への投票と認められるか否かを判断すべきである。
重要事実
本件は選挙における投票の効力が争われた事案である。係争の投票6票について、特定の候補者Bの氏名が記載されていたものの、その記載内容が不正確であった等の事情があったが、原審は諸般の事情を考慮した上で、これらを候補者Bへの有効投票であると認定した。
あてはめ
本件の係争投票6票について、単に記載された文字のみを見るのではなく、原判決が判示したような当時の選挙状況や候補者の属性等の諸般の事情を総合的に勘案すれば、選挙人が候補者Bに投票する意図であったと推認するのが相当である。したがって、これらをBの有効投票と認めた原審の判断に経験則違背や法令違反は認められない。
結論
本件係争投票6票を候補者Bの有効投票と認めた原審の判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
公職選挙法上の投票の効力(自書・他事記載等)が争点となる事案において、表記の揺れや誤記がある場合の有効性判断の基準として活用できる。特に、形式的な記載内容だけでなく実質的な選挙人の意思を重視する「合理的推認」の重要性を示す。ただし、具体的な考慮事情の詳細は判決文からは不明なため、原審等の具体的事実関係を参照する必要がある。
事件番号: 昭和38(オ)7 / 裁判年月日: 昭和38年4月5日 / 結論: 棄却
「新本」の「本」は、その音感等から「保」の誤記と認められるとし、かかる誤記のありうることを説明した上で、「新本」と記載された投票には、候補者新保Dに対して投票しようとする選挙人の意思が表明されていることが明らかであるとした原判旨は首肯できる。
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…
事件番号: 昭和31(オ)687 / 裁判年月日: 昭和31年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙会における決定の効力は、開票の際に存在した事実上の投票状況を基礎として判断されるべきであり、事実認定に疑義がある場合には、証拠により確定された事実に従う。 第1 事案の概要:本件では、選挙会における決定の効力が争われた。具体的には、係争の投票4票が開票の際に存在したか否かが争点となり、上告人は…
事件番号: 昭和45(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和45年10月23日 / 結論: 破棄差戻
候補者中にD英実とE英七とがある場合に、D英七と記載された投票は、D英実に対する有効投票と認めるべきである。
事件番号: 昭和35(オ)493 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、候補者の氏名を正確に記載していない投票であっても、その記載内容から特定の候補者を指すと客観的に認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として認められる。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、被上告人(候補者)に対するものと考えられる投票の中に、「D…