判旨
公職選挙法上の投票の効力判定において、候補者の氏名を正確に記載していない投票であっても、その記載内容から特定の候補者を指すと客観的に認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として認められる。
問題の所在(論点)
公職選挙法に基づく自書式投票において、候補者の正確な氏名とは異なる通称や略称、あるいは一部に誤記を含むと見られる記載がなされた投票につき、特定の候補者への有効投票として認めることができるか。
規範
自書式投票制度における投票の有効性は、投票者の真意を可能な限り尊重する観点から判断されるべきである。したがって、候補者の氏名として不正確な記載がなされている場合であっても、その記載内容を社会通念に照らし、特定の候補者を指すものと客観的に推認できるときは、公職選挙法上の有効投票として取り扱うのが相当である。
重要事実
村議会議員選挙において、被上告人(候補者)に対するものと考えられる投票の中に、「D」および「E」と記載された投票(検第二、検第一二)が存在した。これらの投票が、被上告人に対する有効投票として計上されるべきか、あるいは無効とされるべきかが争点となり、原審はこれらを有効と判断した。
あてはめ
本件において、投票用紙に記載された「D」および「E」という表示は、候補者である被上告人を指し示すものとして社会通念上特定が可能であると解される。判決文からは具体的な氏名との対応関係の詳細は不明であるが、原審が認定した事実関係に基づき、客観的に被上告人を表示しようとしたものと認められる以上、これを無効とすべき特段の事情はない。したがって、これらは被上告人に対する有効な意思表示として評価される。
結論
本件各投票は被上告人に対する有効投票と判断される。よって、原判決の判断は正当であり、上告は棄却される。
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…
実務上の射程
公職選挙法68条の無効投票の規定(特に「候補者の氏名以外の事項を記載したもの」等)の解釈において、有効投票の範囲を広汎に認める実務上の指針となる。答案上は、誤記や略称がある投票の効力が問われた際、投票者の真意を尊重し「客観的に特定の候補者を指すといえるか」という基準を示す際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和35(オ)442 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙人の意思を可能な限り尊重し、記載から特定の候補者を選ぶ意思が確認できる場合は有効とすべきであるが、同一の氏を称する候補者が複数存在する状況下で、記載された名が特定の候補者のものと認められず、かつ他候補者との区別が不明な投票は、無効と解するのが相当である。 第1 事案の概要:本件選挙には、「D」…
事件番号: 昭和31(オ)237 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、投票用紙に記載された文字が判読可能であり、かつ候補者の氏名と同一または類似する場合には、当該投票は有効と解される。本判決は、原審の事実認定および効力判定に法令違背がないとして上告を棄却した。 第1 事案の概要:本件は、選挙における各投票の効力が争われた事案であ…
事件番号: 昭和35(オ)871 / 裁判年月日: 昭和35年12月2日 / 結論: 棄却
a組が候補者A久市が代表取締役である会社名であるとしても、他の候補者A道徳の氏名を明記しa組を附記した投票は右A久市に対する有効投票とはいえない。
事件番号: 昭和40(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
一 「モリヤゲン」と記載された投票は、候補者守Bが「モリゲン」の通称を有する以上、他に候補者守屋Dがあり、また右Bの父で同じく「モリゲン」の通称を有する守Eに判示の事情が認められるとしても、これを候補者守Bの得票と認めるのが相当である。 二 候補者丹野Fが屋号を丹長と称し、「(記載内容は末尾添付)」をその記号として使用…