判旨
地方議会議員の選挙効力に関する裁決取消訴訟において、当該議員の任期が満了した場合には、もはや当該選挙の効力を争う訴えの利益は失われる。
問題の所在(論点)
議員の任期が満了した場合に、当該議員を選出した選挙の効力に関する裁決の取消を求める訴えの利益が存続するか(行政事件訴訟法9条1項参照)。
規範
行政事件訴訟における「訴えの利益」は、当該処分を取り消すことによって回復すべき法律上の利益が存在することを要する。選挙の効力を争う訴訟において、その前提となる議員の任期が満了した場合には、判決によって選挙の結果を覆したとしても、その効果が将来にわたって生じる余地がないため、訴えの利益は消滅する。
重要事実
上告人らは、昭和26年4月23日に施行された熊本市議会議員選挙の効力に関し、被上告人(熊本県選挙管理委員会等)が行った訴願裁決の取消を求めて出訴した。しかし、本件訴訟の継続中に、当該選挙によって選出された議員の任期が満了した。
あてはめ
本件における選挙による議員の任期は、現在においてすでに満了していることが明白である。この場合、判決によって裁決を取り消したとしても、遡って選挙の結果を是正し、現職議員としての地位に影響を及ぼすといった具体的な法的効果を期待することはできない。したがって、上告人らはもはや本訴の判決を求めるべき法律上の利益を有しないと解される。
結論
議員の任期が満了したことにより訴えの利益が失われたため、請求を棄却すべきである(実務上は訴え却下となるが、本判決の主文に従い棄却とする)。
実務上の射程
選挙無効訴訟や当選無効訴訟において、任期満了による訴えの利益の消滅を認めるリーディングケースである。答案上は、行訴法9条1項の「法律上の利益」の有無を検討する際、処分の効果が期間経過により消滅した場面(回復すべき利益の欠如)の例として引用する。
事件番号: 昭和25(オ)175 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方議会の解散賛否投票の効力を争う訴訟において、当該議会議員の任期が満了した場合には、もはや当該訴訟の判決を求める訴えの利益は失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和23年7月7日に実施された石川県江沼郡a町議会の解散賛否投票の効力を争い、当該投票の効力に関する被上告人の訴願裁決の取消しを求め…
事件番号: 昭和26(オ)420 / 裁判年月日: 昭和26年12月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】選挙による公務員の任期が満了した場合には、当選の効力に関する訴願裁決の取消しを求める訴えの利益は消滅する。また、異議申立てがないにもかかわらず、選挙日から長期間経過後に選挙管理委員会が当選無効を決定することは権限を逸脱した無効な処分である。 第1 事案の概要:昭和22年4月の村長選挙において、選挙…
事件番号: 昭和38(オ)163 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: その他
当該選挙において当選した東京都議会議員の任期が現在満了している以上、右選挙における当選人の当選を無効とする旨の判決を求める訴は、法律上の利益を失つたといわねばならず、右訴を却下すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…