一 村議会議員の任期の満了したときは、議員除名議決の取消を求める訴の利益は失われる。 二 訴訟が上告審に係属中訴の利益がなくなつたため、被上告人(原告)が敗訴の判決をうける場合でも、上告の理由がないときは、訴訟費用は上告人に負担せしめるのを相当とする。
一 村議会議員の任期満了と議員除名議決の取消を求める訴の利益 二 訴の利益がなくなつた場合の訴訟費用の負担
地方自治法134条,地方自治法135条,民訴法223条,民訴法90条
判旨
地方議会議員の除名処分に対する取消訴訟において、当該議員の任期が満了した場合には、処分を取り消す法律上の利益(訴えの利益)は消滅する。
問題の所在(論点)
地方議会議員に対する除名議決の取消訴訟の係属中に、当該議員の任期が満了した場合、訴えの利益(狭義の訴えの利益)は失われるか。
規範
行政処分(除名議決)の取消しを求める訴訟において、当該処分の効力を争う実益が存続していることが必要であり、事後的な事情の変化により、判決によって回復すべき権利や法的地位が消滅した場合には、訴えの利益が失われる。
重要事実
村議会の議員であった被上告人は、昭和24年6月30日に上告人(議会)から除名議決を受けた。被上告人はこの除名議決の取消しを求めて提訴したが、訴訟継続中の昭和26年4月29日、当時の村議会議員の任期が満了した。
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…
あてはめ
本件において、被上告人が取り消そうとしているのは村議会議員の地位を剥奪する除名議決である。しかし、判決を待つ間に村議会議員の任期(昭和26年4月29日まで)が満了した。任期が満了した以上、仮に除名議決を取り消したとしても、被上告人が議員としての地位を回復することは客観的に不可能である。したがって、現在において本件判決を求める実益(法的利益)は失われているものと評価される。
結論
任期満了により訴えの利益は失われ、請求は棄却(実質的には訴え却下相当だが本判決は棄却)されるべきである。
実務上の射程
議員の身分回復を主目的とする訴訟において、任期満了が訴えの利益を消滅させる典型例として機能する。ただし、名誉回復や給与請求等の付随的利益が別途認められる余地については、本判決の文言からは限定的であり、後の判例法理(最大判昭26.1.24等)との整合性で整理が必要となる。
事件番号: 昭和26(オ)197 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】解職請求に対する投票の効力に関する裁決取消訴訟において、訴訟継続中に当該公務員の任期が満了し、その職を失った場合には、もはや裁決の取消し等を求める法律上の利益は失われる。 第1 事案の概要:村長の職にあった被上告人に対し、解職請求(リコール)がなされ、これに伴う投票が実施された。上告人(選挙管理委…
事件番号: 昭和25(オ)175 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方議会の解散賛否投票の効力を争う訴訟において、当該議会議員の任期が満了した場合には、もはや当該訴訟の判決を求める訴えの利益は失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和23年7月7日に実施された石川県江沼郡a町議会の解散賛否投票の効力を争い、当該投票の効力に関する被上告人の訴願裁決の取消しを求め…