当該選挙において当選した東京都議会議員の任期が現在満了している以上、右選挙における当選人の当選を無効とする旨の判決を求める訴は、法律上の利益を失つたといわねばならず、右訴を却下すべきである。
議員の任期満了と当選訴訟の法律上の利益。
公職選挙法203条
判旨
選挙の効力や当選の効力を争う訴訟において、議員の任期が満了した場合には、当該訴訟を維持する法律上の利益が消滅する。
問題の所在(論点)
選挙の効力や当選の効力を争う訴訟の係属中に、当該議員の任期が満了した場合、訴えの利益(法律上の利益)が失われるか。
規範
行政訴訟における訴えの利益は、当該処分を取り消すことによって回復すべき法律上の利益が存在することを要する(行政事件訴訟法9条1項参照)。選挙関係訴訟においては、対象となる議員の任期が満了したときは、当選の効力等を争う実効性が失われるため、特段の事情がない限り訴えの利益を失う。
重要事実
上告人らは、昭和34年4月23日執行の東京都議会議員選挙(葛飾区選挙区)の当選の効力に関する異議決定の取消し、および当選人Bの当選無効を求めて提訴した。しかし、本件訴訟の継続中に、当該選挙に係る東京都議会議員の任期が満了した。
あてはめ
本件において、上告人らが取り消しを求めているのは都議会議員選挙の当選の効力に関する決定等である。しかし、公知の事実によれば、当該選挙で当選した議員の任期は既に満了している。任期満了後は、仮に決定を取り消したとしても、上告人らが選挙法上の地位を回復したり、選挙結果を是正したりする実益が存しない。したがって、本件訴えを維持する法律上の利益は失われたものと解される。
結論
本件訴えは、任期満了により法律上の利益を失ったため、不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
選挙訴訟における訴えの利益の消滅に関するリーディングケースである。答案上は、行訴法9条1項の「法律上の利益」の有無を検討する際、処分の効果が期間経過等により消滅した場面(狭義の訴えの利益)の典型例として、本判例の論理を用いる。任期満了後の名誉回復等の主観的利益は、原則として法律上の利益に含まれないという点に注意が必要である。
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…
事件番号: 昭和30(オ)430 / 裁判年月日: 昭和35年3月9日 / 結論: その他
地方公共団体の議会議員の任期が満了したときは、除名処分の取消を求める訴の利益は失われる。
事件番号: 昭和28(オ)106 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】衆議院議員総選挙の当選無効を求める訴訟において、当該選挙により選出された議員で組織された衆議院が解散された場合には、当選の結果取得する議員たる身分が失われるため、訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は、昭和27年10月1日に行われた衆議院議員総選挙において当選した被上告人の当選無効を求…
事件番号: 昭和35(オ)806 / 裁判年月日: 昭和36年9月14日 / 結論: 破棄差戻
一 「ヤナセ」と記載された投票は、候補者長瀬に対する有効投票とは認められない。 二 「柳瀬」「成瀬」と記載された投票は、候補者長瀬に対する有効投票とは認められない。 三 「長井」「ナガイ」「ながい」と記載された投票は、候補者長瀬に対する有効投票とは認められない。