地方公共団体の議会議員の任期が満了したときは、除名処分の取消を求める訴の利益は失われる。
地方公共団体の議会の議員の任期満了後における除名処分の取消を求める訴の利益
行政事件訴訟特例法1条,地方自治法134条,地方自治法135条,地方自治法137条
判旨
地方議会議員の除名処分に対し、その取消しを求める訴えは、議員の身分回復を目的とするものである。したがって、議員の任期満了後は身分回復が不可能であるため、たとえ報酬請求権等の回復が期待できるとしても、当該訴えの利益は失われる。
問題の所在(論点)
地方議会議員の除名処分を受けた者が、訴訟中に任期満了により議員の身分を喪失した場合に、なお当該処分の取消しを求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項柱書、当時の実務上の概念)が認められるか。報酬請求権等の回復という経済的利益を根拠に訴えの利益を維持できるかが争点となった。
規範
行政事件訴訟における訴えの利益とは、当該処分の取消しによって権利・利益の回復が図られる実効性を要する。地方議会議員の除名処分取消しの訴えは、剥奪された議員の身分回復を本来の目的とする。したがって、任期満了等により身分回復が不可能となった場合には、身分に伴い派生する報酬請求権等の存否にかかわらず、訴えの利益は失われる。
重要事実
被上告人(原告)は、昭和26年3月28日に上告人(被告・板橋区議会)から除名処分を受けた。これに対し、被上告人は除名議決の取消しを求めて提訴したが、訴訟継続中に当該議員としての本来の任期(同年4月29日)が満了した。原審は、処分の取消しにより報酬請求権等が回復されることを理由に訴えの利益を認めたため、上告人がこれを不服として上告した。
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…
あてはめ
本件における除名処分取消しの訴えは、判決によって除名がなかった状態に復帰させ、議員の身分を回復させることを目的とするものである。しかし、被上告人の任期は既に満了しており、除名を取り消したとしても議員の身分を回復する余地はない。多数意見によれば、議員の身分は公法上の地位であり、そこから派生する報酬請求権という経済的利益の回復をもって、既に失われた身分回復の訴えを維持することは許されない。したがって、任期満了の事実をもって訴えの利益は消滅したといえる。
結論
既に議員の任期が満了している場合、除名処分の取消しを求める訴えは、訴訟の利益を欠く不適法なものとして棄却(実務上は却下すべきだが、本判決主文では棄却)される。
実務上の射程
本判決は「訴えの利益」の存否が争点となる場面で、特に「身分」とそこから派生する「財産権」の関係について論じる際に引用される。もっとも、地方議会議員の出席停止処分については令和2年大法廷判決により司法審査の対象とされるなど変化があるが、任期満了による訴えの利益の消滅という構成自体は、公務員の免職処分等における基本原則として現在も機能している。
事件番号: 昭和31(オ)130 / 裁判年月日: 昭和35年1月12日 / 結論: 破棄差戻
単に株主総会の決議をなす動機に公序良俗違反の不法があるにとどま る場合は、右決議は無効でない。
事件番号: 昭和38(オ)163 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: その他
当該選挙において当選した東京都議会議員の任期が現在満了している以上、右選挙における当選人の当選を無効とする旨の判決を求める訴は、法律上の利益を失つたといわねばならず、右訴を却下すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)625 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
公権力の行使に当る公務員の職務行為に基く損害については、国または公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当つた公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。