判旨
衆議院議員総選挙の無効を求める訴えにおいて、その後に衆議院が解散された場合には、当該選挙による効力は将来に向かって失われるため、選挙無効を求める法律上の利益は消滅する。
問題の所在(論点)
衆議院議員総選挙の無効を求める訴訟の継続中に、衆議院が解散された場合、当該選挙の無効を求める訴えの利益(法律上の利益)は失われるか。
規範
行政訴訟(選挙無効訴訟)において、訴えの利益(法律上の利益)が認められるためには、当該処分や行為の効力が存続しており、判決によってその効力を排除する実効性が認められなければならない。対象となる選挙の効力が事後的な事情により将来に向かって完全に失われた場合には、その無効を宣言する実効性が失われ、訴えの利益は消滅する。
重要事実
上告人らは、昭和24年1月23日に施行された衆議院議員総選挙(長野県第1区ないし第4区)について、選挙人または議員候補者の立場から選挙無効の判決を求めて提訴した。しかし、訴訟継続中の昭和27年8月28日に衆議院が解散された。これに伴い、争点となっている総選挙によって選出された議員の地位や当該選挙自体の効力が将来に向けてどのように変化するかが問題となった。
あてはめ
衆議院が解散されたことは公知の事実である。この解散により、昭和24年1月23日施行の総選挙による効力はすべて将来に向かって失われることとなる。そうであれば、当該選挙の効力自体が既に消滅している以上、今さら裁判所が判決をもってその無効を宣言する必要性は認められない。したがって、上告人らが求めている選挙無効の判決を受けるべき「法律上の利益」は、解散という事後的状況の変化によって失われたといえる。
結論
衆議院の解散により選挙の効力が将来に向かって失われた以上、訴えの利益は失われるため、請求を棄却(実質的には訴え却下の判断を維持)すべきである。
実務上の射程
選挙無効訴訟において、任期満了や解散により当該選挙に係る議員の地位が失われた場合に「訴えの利益」が消滅するという、事情判決以前の訴訟要件に関する判断枠組みを示す。客観訴訟においても、判決による是正の実効性が失われれば法律上の利益が否定されることを確認する際に用いる。
事件番号: 平成11(行ツ)16 / 裁判年月日: 平成12年11月10日 / 結論: 破棄自判
衆議院議員選挙を無効とする判決を求める訴えは、衆議院の解散によって、その法律上の利益を失う。
事件番号: 昭和28(オ)106 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】衆議院議員総選挙の当選無効を求める訴訟において、当該選挙により選出された議員で組織された衆議院が解散された場合には、当選の結果取得する議員たる身分が失われるため、訴えの利益は消滅する。 第1 事案の概要:上告人は、昭和27年10月1日に行われた衆議院議員総選挙において当選した被上告人の当選無効を求…
事件番号: 昭和24(オ)321 / 裁判年月日: 昭和25年9月8日 / 結論: その他
一 権限のない者によつて選任せられた投票立会人の立会について、投票管理者が異義を述べなかつたからといつて、右の投票立会人が投票立会人としての資格を具有するに至るものと解することはできない。 二 ある村の選挙を全部無効とし改めて適法な手続によつて選挙をやりなおすにおいては、その村の属する選挙区における候補者の当落に異動を…
事件番号: 昭和26(オ)346 / 裁判年月日: 昭和26年12月28日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】村議会の解散賛否投票の効力を争う訴えにおいて、当該議会議員の任期が満了した場合には、もはや判決を求める訴えの利益(実益)は失われる。 第1 事案の概要:徳島県美馬郡a村において、昭和25年9月7日に村議会解散の賛否を問う投票が行われた。被上告人は、この投票の効力に関する選挙管理委員会の異議決定およ…