一 権限のない者によつて選任せられた投票立会人の立会について、投票管理者が異義を述べなかつたからといつて、右の投票立会人が投票立会人としての資格を具有するに至るものと解することはできない。 二 ある村の選挙を全部無効とし改めて適法な手続によつて選挙をやりなおすにおいては、その村の属する選挙区における候補者の当落に異動を生ずる虞がある場合は、その村の選挙を無効とすべきである。 三 補助参加人の上告申立期間は、被参加人の上告申立期間に限られる。 四 被参加人が上告申立をした場合、補助参加人が被参加人のために上告理由書を提出することのできる期間は、被参加人の上告理由書提出期間に限られる。
一 権限のない者によつて選任せられた投票立会人の立会と投票管理者の黙認 二 選挙を一部無効とすべき場合 三 補助参加人の上告申立期間 四 補助参加人の上告理由書提出期間
衆議院議員選挙法24条,衆議院議員選挙法82条,民訴法69条,民訴法366条(396条),民訴法398条
判旨
選挙管理委員会が職務を放棄して村役場事務当局に一任し、権限のない者により立会人が選任された選挙は、自由・公正を旨とする法の精神を無視した重大な規定違反であり、選挙の結果に異動を及ぼす虞があるものとして無効となる。
問題の所在(論点)
選挙管理委員会がその職務を村役場に丸投げし、権限のない者が立会人を選任した場合、衆議院議員選挙法(当時)における「選挙ノ規定ニ違反」し、かつ「選挙ノ結果ニ異動ヲ及ボス虞」があるといえるか。
規範
1. 選挙管理委員会がその職務権限(投票管理者・立会人の選任等)を他機関に一任し、執行を放棄することは、選挙の自由・公正を保持するために設けられた機関の趣旨に反し、選挙規定に違反する。 2. 権限のない者により選任された立会人が選挙事務に関与することは重大な規定違反である。投票管理者が異議を述べなかったとしても、適法な選任があったとはみなされない。 3. これらの違反が重なり、選挙の体を具えないほどに自由・公正・厳粛を旨とする法の精神を無視している場合は、選挙の結果に異動を及ぼす虞(衆議院議員選挙法82条)があるものと認められる。
事件番号: 平成14(行ヒ)95 / 裁判年月日: 平成14年7月30日 / 結論: 棄却
村長選挙において,現職の村長が,選挙の管理執行に密接に関連する戸籍謄抄本の交付事務についての権限を濫用し,他の立候補予定者が立候補の届出書に添付すべき戸籍抄本の交付を受けることを妨げて,同人の立候補することを妨害し,自ら無投票当選を果たし,選挙人の投票の機会を奪った行為は,公職選挙法205条1項にいう選挙の規定の違反に…
重要事実
a村の選挙管理委員会は、1回開催されて投票・開票管理者の選任を行ったのみで、それ以外の職務一切を村長、助役、役場書記等の村役場事務当局に一任する旨の決議をして散解した。その結果、本件選挙の投票立会人3名は、選挙管理委員会ではなく、権限のない村長・助役らの委嘱によって選任された。投票管理者はこれら立会人の職務執行に異議を述べなかった。原審は、この他にも複数の違法・不始末があったことを認定し、選挙無効の訴えを認容した。
あてはめ
1. 選挙管理委員会は、選挙の公正保持のために一般行政庁から独立して設けられた機関である。本件のように、選管が立会人選任等の職務を村役場事務当局に一任して顧みなかったことは、法が選管を設置した趣旨を根本から覆す重大な違反である。 2. 投票立会人は選挙を監視する重要機関であり、権限のない者により選任された者が関与したことは明白な規定違反である。管理者が異議を述べなかったとしても、それは単なる黙認であり、性質の異なる「選任」という法的行為を補完するものではない。 3. 当該選挙区全体の最下位当選者と次点者の得票差が、a村の有権者総数より小さい場合、a村での適法な選挙のやり直しによって当落が逆転する可能性が客観的に存在するため、結果に異動を及ぼす虞があるといえる。
結論
本件選挙は、選挙の体を具えないほど重大な規定違反があり、かつ選挙の結果に異動を及ぼす虞があるため、無効である。
実務上の射程
選挙管理委員会の独立性・職務執行の重要性を強調する判例である。行政庁の補助機関化を否定し、形式的な「黙認」による瑕疵の治癒を認めない厳格な判断枠組みを示している。選挙無効訴訟において「客観的な異動の可能性」を論じる際の基準としても参照される。
事件番号: 昭和31(オ)268 / 裁判年月日: 昭和31年10月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法205条の「選挙の無効」は、管理執行手続に関する明文規定違反のみならず、選挙の基本理念である「選挙の自由公正の原則」が著しく阻害される場合も含まれる。 第1 事案の概要:本件は、選挙管理の任にある機関が執行した選挙において、その管理執行の手続に関し、具体的な明文規定の違反が問われた事案で…
事件番号: 昭和30(オ)970 / 裁判年月日: 昭和31年2月14日 / 結論: 棄却
選挙に際し政党が発表宣伝した政策がかりに実現不可能、無責任なものであつても、そのために選挙を無効とすべきではない。