一 憲法の無効確認を求める訴は、不適法である。 二 最高裁判所に直接提起された憲法の無効確認を求める訴は、下級裁判所に移送するまでもなく、却下を免れない。
一 憲法の無効確認を求める訴の適否 二 最高裁判所に直接提起された憲法の無効確認を求める訴を下級裁判所に移送することなく却下した事例
民訴法30条,民訴法202条,憲法76条
判旨
裁判所は憲法の規定に基づき司法権を行使するものであるから、その授権の根拠である憲法自体の効力を審理判断する権限を有しない。したがって、日本国憲法の無効確認を求める訴えは、裁判所の裁判権の範囲外にあり不適法である。
問題の所在(論点)
日本国憲法の無効確認を求める訴えについて、裁判所は憲法76条に基づく司法権の行使として、憲法自体の効力を判断する裁判権を有するか。
規範
裁判所が有する司法権(憲法76条1項)は、憲法自体の規定を根拠とするものである。そのため、裁判所は、自己の存立根拠である憲法全体の効力について裁判する権限を有しない。このような訴えは、法律上の争訟としての適格を欠き、補正不能な不適法なものとして却下されるべきである。
重要事実
原告は、日本国憲法が無効であることの確認を求めて訴えを提起した。これに対し、裁判所がこのような憲法の効力自体を争う訴訟について、司法権の行使として審判し得るかが問題となった。
あてはめ
本件訴訟の目的は日本国憲法の無効確認にある。しかし、裁判所の司法権は憲法76条の規定によって初めて存在するものである。自らの権限の源泉である憲法の効力を否定または肯定する判断を行うことは、論理的に自己矛盾を内包し、司法権の概念的限界を超えるものといえる。したがって、本件訴えは裁判権の行使が及ばない対象を目的とするものであり、不適法な訴えと解される。
結論
本件訴えは不適法であり、却下される。裁判所は憲法全体の効力について裁判する権限を有しない。
実務上の射程
司法権の限界(憲法判断の対象的限界)に関するリーディングケースである。憲法改正の限界などの統治行為論とも関連するが、本判決はより根本的に「司法権の自己言及の不可」を論理的根拠としており、憲法自体の存否を争う訴訟の門前払いを基礎付ける理論として機能する。
事件番号: 昭和27(マ)127 / 裁判年月日: 昭和28年4月1日 / 結論: 却下
わが現行法制の下にあつては、たゞ純然たる司法裁判所だけが設置せられているのであつて、いわゆる違憲審査権なるものも、下級審たると上級審たるとを問わず、司法裁判所が当事者に存する具体的な法律上の争訟について審判をなすため必要な範囲において行使せられるに過ぎない。すなわち憲法八一条は単に最高裁判所が司法裁判所として右違憲の審…
事件番号: 昭和27(マ)23 / 裁判年月日: 昭和27年10月8日 / 結論: 却下
最高裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない。