判旨
準禁治産者(被保佐人)による上告提起において、保佐人の同意という訴訟能力の欠缺が裁判所の命じた期間内に補正されない場合、当該上告は不適法として却下される。
問題の所在(論点)
準禁治産者(被保佐人)が保佐人の同意を得ずに訴訟行為(上告提起)を行った場合に、裁判所の補正命令に従わず同意を得た旨の書面等を提出しなかった際の効果が問題となる。
規範
制限行為能力者が行う訴訟行為には原則として法定代理人等の同意が必要であり、この欠缺は訴訟能力の欠缺に準ずるものとして、裁判所による補正命令の対象となる。指定された期間内に補正がなされないときは、訴訟上の要件を欠く不適法なものとして却下される(旧民事訴訟法および現行民事訴訟法34条、137条等参照)。
重要事実
上告人は準禁治産者(現行法の被保佐人に相当)であった。上告人は本件訴訟において上告の申立てを行ったが、その際、必要とされる保佐人の同意を得ていなかった。これに対し、最高裁判所は期間を定めて当該同意の欠缺を補正するよう命じたが、上告人はその期間内に補正を行わなかった。
あてはめ
上告人は準禁治産者であり、上告提起という重要な訴訟行為を行うには保佐人の同意を要する。裁判所が欠缺を補正するよう命じたにもかかわらず、定められた期間内に保佐人の同意があることを証明するなどの補正手続が完了しなかった。したがって、訴訟能力の欠缺(同意の欠缺)が解消されていないといえる。
結論
上告は不適法であり、却下される。
実務上の射程
被保佐人の訴訟行為における同意の要否およびその欠缺の効果を確認する事例である。実務上は、同意を欠く訴訟行為は無効であるが追認が可能であること(民訴法34条2項)、補正命令に従わない場合は不適法却下となること(民訴法140条等)の根拠として用いる。旧法下の事案であるが、現行法下の被保佐人の訴訟能力に関する議論にも直接妥当する。
事件番号: 昭和32(テ)27 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】準禁治産者が上告の申立てを行うには保佐人の同意を要し、裁判所の命じた期間内にその欠缺を補正しない場合は、上告は不適法として却下される。 第1 事案の概要:上告人は旧民法下の準禁治産者(現在の被保佐人に相当)であった。上告人は本件訴訟において上告の申立てを行ったが、これについて保佐人の同意を得ていな…
事件番号: 昭和33(オ)441 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】訴訟委任の当時、本人に意思能力が欠如していた場合には、委任状が作成されていても有効な訴訟委任とは認められず、上告代理権の欠缺として上告は不適法となり却下される。 第1 事案の概要:本件の上告人は、上告代理人弁護士を選任する旨の委任状を作成していた。しかし、職権による調査の結果、上告人は当該委任状の…
事件番号: 昭和33(オ)232 / 裁判年月日: 昭和33年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保佐人の同意を欠く被保佐人の訴訟行為は原則として無効であり、将来的に同意が得られる見込みがある等の事情があっても、裁判所は本案判決を行うことはできず、訴えを却下すべきである。 第1 事案の概要:準禁治産者(現在の被保佐人に相当)であった上告人が、保佐人の同意を得ることなく本案の訴えを提起した。上告…
事件番号: 昭和29(オ)730 / 裁判年月日: 昭和32年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取消権の行使は必ずしも明示的に行われる必要はないが、単に借受金を返済するから土地を返還してほしいという申入れがなされたにすぎない場合には、直ちに相手方の所有権取得を否認して取消権を黙示に行使したものとは認められない。 第1 事案の概要:親権者Fの代理人Dが、未成年者Eの所有する本件土地をGに売却し…