判旨
訴訟委任の当時、本人に意思能力が欠如していた場合には、委任状が作成されていても有効な訴訟委任とは認められず、上告代理権の欠缺として上告は不適法となり却下される。
問題の所在(論点)
訴訟委任状が存在する場合であっても、委任時に本人に意思能力が欠如していたとき、当該訴訟委任およびそれに基づく代理人の訴訟行為(上告提起)の有効性は認められるか。
規範
訴訟行為の前提となる訴訟委任が有効であるためには、委任時に本人が訴訟委任をするに足りる意思能力を有していることが必要である。意思能力を欠く状態でなされた授権行為は無効であり、その欠缺が補正できない場合には、代理権のない者による不適法な訴訟行為となる。
重要事実
本件の上告人は、上告代理人弁護士を選任する旨の委任状を作成していた。しかし、職権による調査の結果、上告人は当該委任状の作成当時、訴訟委任をするに足りる意思能力を有していなかったことが判明した。また、この授権の欠缺については、事後的に補正することができない状況にあった。
あてはめ
本件では、記録上は委任状が存在するものの、本人が作成当時に意思能力を欠いていた以上、その委任状は本人の真意に基づくものとは認められない。したがって、弁護士に対する有効な訴訟委任は成立しておらず、代理権の授権には致命的な欠陥がある。この授権の欠缺は補正不能であるため、当該弁護士が行った上告提起は、代理権を有しない者による行為といえる。
結論
本件上告は、代理権のない者によって提起された不適法なものであるため、却下を免れない。
実務上の射程
訴訟能力(民訴法28条)や代理権の存在は職権調査事項であり、形式的に委任状が存在しても実質的な意思能力の有無が問題となり得ることを示す。特に意思能力の欠缺が補正不能な場合には、訴えや上告が不適法却下されるという実務上の帰結を導く際に有用な判例である。
事件番号: 昭和32(ヤ)37 / 裁判年月日: 昭和33年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】準禁治産者が再審の訴えを提起するには保佐人の同意を要し、裁判所の命じた期間内にその欠缺を補正しない場合は、訴えは不適法として却下される。 第1 事案の概要:再審原告は準禁治産者であった。再審原告は本件再審の訴えを提起したが、これについて保佐人の同意を得ていなかった。最高裁判所は、再審原告に対し、保…
事件番号: 昭和33(オ)232 / 裁判年月日: 昭和33年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保佐人の同意を欠く被保佐人の訴訟行為は原則として無効であり、将来的に同意が得られる見込みがある等の事情があっても、裁判所は本案判決を行うことはできず、訴えを却下すべきである。 第1 事案の概要:準禁治産者(現在の被保佐人に相当)であった上告人が、保佐人の同意を得ることなく本案の訴えを提起した。上告…
事件番号: 昭和36(オ)201 / 裁判年月日: 昭和40年5月27日 / 結論: その他
相続放棄の申述についても、民法第九五条の適用がある。
事件番号: 昭和31(オ)818 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成否を判断するにあたり、相手方が代理権があると信じたことに正当な理由があるかは、過去の交渉経緯や取引条件の合理性を総合して判断されるべきである。本件では、本人が過去に高値での売却を主張して拒絶した経緯や、代理人が提示した価格が本人の希望を大きく下回る点等に照らし、過失が認められ表見代理は…