判旨
憲法は、最高裁判所が終審裁判所であることを定める81条の場合を除き、審級制度の詳細については立法府の裁量に委ねている。したがって、特定の裁判手続において不服申立てを認めない法律の規定があったとしても、直ちに違憲とはならない。
問題の所在(論点)
特定の裁判上の決定に対し、法律が不服申立ての手段を認めていないことが、憲法の定める審級制度等の趣旨に反し違憲といえるか。
規範
憲法上の審級制度は、憲法81条が最高裁判所を終審裁判所と定めている点を除き、法律(立法)をもって適宜に定めることができる。したがって、特定の申立てに対する不服申立を許さないとする立法政策も、憲法の委ねる合理的な裁量の範囲内にある限り違憲とはならない。
重要事実
抗告人は、高等裁判所が行った本件執行処分取消申請を却下する決定に対し、民事訴訟法(旧法558条等)に基づき即時抗告を申し立てた。しかし、当時の現行法上、当該決定に対する不服申立てを許す規定が存在しなかったため、抗告人は「不服申立てを許さないことは憲法に違反する」と主張して争った。
あてはめ
憲法は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であること(81条)を定めているが、それ以外の審級の構成や不服申立ての可否については、立法府が適切に定めるべき事項である。本件において、高等裁判所の決定に対しさらなる不服申立てを認めないとする現行法の解釈・運用は、立法府に与えられた審級設計の裁量権の範囲内にある。したがって、所論のような不服申立てを認めない法制度は憲法に抵触するものではない。
結論
現行法上、所論の決定に対する不服申立てを許さないことに違憲の点はなく、本件抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(ク)86 / 裁判年月日: 昭和31年5月4日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】高等裁判所の決定に対する最高裁判所への抗告(特別抗告)は、憲法違反を理由とする場合に限られ、単なる法令違憲を主張する実質が法律判断の是非にある場合は不適法である。また、このような審級制度の制約は、憲法81条の場合を除き立法府の裁量に委ねられており、憲法32条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人…
司法試験においては、裁判を受ける権利(憲法32条)や審級制の合憲性を論ずる際の基本判例として活用できる。特に「審級制度は立法政策の問題である」という規範は、民事・刑事・行政を問わず不服申立権の制限が問題となる場面で汎用性が高い。
事件番号: 昭和31(ク)28 / 裁判年月日: 昭和31年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告において、憲法違反を理由としない不適法な申立てに対し、原裁判所が却下決定を行うことは憲法32条に違反せず、民事訴訟法の規定に照らし適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所が昭和30年7月5日に行った決定に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由は憲…
事件番号: 昭和31(ク)74 / 裁判年月日: 昭和31年4月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、民事訴訟法(当時)419条の2に規定される特別抗告の要件を満たす場合に限られる。形式的に違憲を主張しても、その実質が単なる手続規定の違背を主張するものである場合には、適法な特別抗告として認められない。 第1 事案の概要:抗告人は、原審の決定に対…
事件番号: 昭和31(ク)184 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、法律により特に許容された場合に限られ、旧民訴法419条の2(現行民訴法327条等)が定める憲法違反等を理由とする特別抗告等の場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由は原決…
事件番号: 昭和23(ク)34 / 裁判年月日: 昭和23年12月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法において最高裁判所の権限に属するものと定められた場合、または憲法違反を理由とする場合に限り許容される。 第1 事案の概要:抗告人は、下級審の決定に対し最高裁判所への抗告を申し立てた。しかし、当該抗告申立書には、原決定においてなされた憲法上の判断が不当である旨の主張は…