判旨
最高裁判所への抗告が認められるのは法律が特に許容する場合に限られ、憲法違反を理由とする場合であっても、原審が認定していない事実を前提とする主張は、適法な違憲の主張とはいえず不適法である。
問題の所在(論点)
下級審が認定していない事実に基づき、憲法違反を理由として最高裁判所へ抗告を申し立てることが認められるか。
規範
最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、民事訴訟法(当時)が定める特別抗告など、訴訟法において特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限定される。また、憲法違反を理由とする抗告であっても、その主張が原審の認定しない事実を前提とする場合には、前提を欠くものとして適法な違憲の主張には当たらない。
重要事実
本件において抗告人は、競売手続における執行吏の行為が憲法に違反する旨を主張して抗告した。しかし、原審(下級審)は、競売期日において執行吏が午前10時に催告を行い、午後0時36分に終局を告知したこと、および催告から終局まで実質的に1時間以上の時間があった事実を認定しており、抗告人が主張する事実は認めていなかった。
あてはめ
抗告人は違憲を主張するが、その主張の基礎となる事実は、原審が認定した「競売の催告から終局まで1時間以上の時間があった」という事実と相反するものである。最高裁判所の裁判権は、法が特に認める場合に限られるところ、原審が認めない事実を前提とする違憲主張は、実質的に事実認定を争うものにすぎず、適法な憲法問題の提示とは認められない。したがって、本件抗告は適法な不服申立理由を欠いているといえる。
結論
本件抗告は不適法であり、却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(ク)80 / 裁判年月日: 昭和31年4月11日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限られる。民事事件においては、憲法違反を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)に該当しない限り、不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、競売法に基づく競売手続に関連し、原審の判断…
特別抗告や許可抗告において、事実認定の不当を憲法違反の形に偽装して主張しても、それが原審の認定した事実に反するものである限り、適法な上告・抗告理由とはみなされないという実務上の原則を示している。
事件番号: 昭和30(ク)225 / 裁判年月日: 昭和31年1月24日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限定される。民事事件においては、旧民事訴訟法419条の2(現行の特別抗告等)に定められた場合に限られる。 第1 事案の概要:抗告人が、民事事件に関して最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。本件に…
事件番号: 昭和38(ク)423 / 裁判年月日: 昭和38年11月21日 / 結論: 却下
特別抗告制度が違憲であるとの主張は、特別抗告適法の理由にならない(昭和二七年一〇月一五日大法廷決定、民集六巻九号八二七頁参照)。
事件番号: 昭和32(ク)192 / 裁判年月日: 昭和32年10月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行民訴法336条)に定められた特別抗告の場合に限られる。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた。抗告人は憲法違反を名目に掲げているが、その実質的な内容は原決定の手続違反を主張する…
事件番号: 昭和31(ク)47 / 裁判年月日: 昭和31年3月27日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告を特別抗告のみに限定することは立法政策の問題であり、憲法32条に違反しない。また、審級制度の構成は憲法81条の場合を除き立法府の裁量に委ねられている。 第1 事案の概要:抗告人らが、高等裁判所のなした決定に対し最高裁判所に抗告を申し立てた事案。抗告人は憲法違反を主張の根拠とし…