判旨
行政機関は法人である自治体の内部機関にすぎず、独立した権利の主体ではないため、自治の権能の侵害を理由とする憲法違反の主張をすることはできない。
問題の所在(論点)
法人たる自治体の内部機関(市の機関)が、憲法92条の地方自治の趣旨に反することを理由に、憲法違反を主張して特別抗告を申し立てる適格を有するか。
規範
憲法違反を理由とする特別抗告が許容されるためには、不服申立人が憲法上の権利の主体であり、その権利が侵害されたことを主張する必要がある。権利の主体でない機関による違憲の主張は、その前提を欠くため不適法である。
重要事実
抗告人(特定の市の機関)は、原決定が自治の本旨に基づいて当該機関が有する権能を侵し、憲法92条の趣旨に反すると主張して、最高裁判所に抗告を申し立てた。本件は、民事事件における特別抗告(旧民事訴訟法419条の2、現行336条相当)の可否が争われた事案である。
あてはめ
抗告人は法人たる市そのものではなく、その一機関にすぎない。機関は権利の主体ではなく、法的に独立した権利義務を享受する地位にない。したがって、自治の権能が侵害されたという主張は、自らの権利侵害を訴えるものではなく、前提を欠くといわざるをえない。
結論
抗告人は権利の主体ではないため、違憲の主張は不適法である。よって、本件抗告は却下される。
実務上の射程
行政機関(首長や委員会等)が自己の名で訴訟を遂行する際の当事者適格や、地方自治体の機関が憲法上の権利主体性を有するかという論点において、否定的な結論を導く際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和31(ク)111 / 裁判年月日: 昭和31年5月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許容された場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行民訴法336条)に規定する特別抗告の場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判官の忌避の原因につき疎明がないとした原審の判断を不服として、最高裁判所に抗告を申し立て…
事件番号: 昭和31(ク)112 / 裁判年月日: 昭和31年5月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許された場合に限られ、民事事件では民事訴訟法旧419条の2(現行336条)所定の抗告に限られる。抗告理由に「違憲」の文言があっても、その実質が事実認定の不当を争うものである場合は、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は…
事件番号: 昭和31(ク)233 / 裁判年月日: 昭和31年9月14日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては旧民訴法419条の2(現行民訴法336条)の特別抗告に限定される。憲法違反を主張しても、その実質が単なる事実誤認の主張にすぎない場合は、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:抗告人は、裁判官の…
事件番号: 昭和32(ク)182 / 裁判年月日: 昭和32年9月18日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは法律に特別の定めがある場合に限られ、特別抗告の理由とされる憲法違反の主張も、原決定が認めていない事実を前提とする場合は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人らは、裁判所書記官が適法な裁判官忌避申立ての受理を拒否したことが憲法32条に違反すると主…
事件番号: 昭和31(ク)74 / 裁判年月日: 昭和31年4月12日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が民事事件の抗告について裁判権を有するのは、民事訴訟法(当時)419条の2に規定される特別抗告の要件を満たす場合に限られる。形式的に違憲を主張しても、その実質が単なる手続規定の違背を主張するものである場合には、適法な特別抗告として認められない。 第1 事案の概要:抗告人は、原審の決定に対…