判旨
当事者本人の供述を信用できないとして排斥した場合、当該供述に基づいて事実を認定したわけではないため、実際に尋問が行われていなくとも判決の結論に影響を及ぼさない。また、尋問申請を放棄したと認められる場合には、手続上の違法は認められない。
問題の所在(論点)
当事者本人尋問が実施されていないにもかかわらず、その供述の信用性を否定して排斥した原判決に、事実認定の手続上の違法があるか。また、申請を放棄した証拠を調べなかったことが違法となるか。
規範
裁判所が特定の供述を信用できないとして排斥する場合、その供述は事実認定の基礎となっていないため、当該供述に係る手続の不備(尋問の未実施等)が直ちに判決の結論に影響を及ぼす違法とはならない。また、当事者が証拠調べの申請を自ら放棄した場合には、その証拠を調べなかったことに手続上の違法はない。
重要事実
上告人(被控訴人)は、原審において本人尋問がなされていないにもかかわらず、原判決が「被控訴本人の供述は信用することができない」と判示したことを不服として上告した。しかし、記録上、上告人は原審の最終口頭弁論において本人尋問の申請を自ら放棄していた。原判決は、他の証拠等に照らして本人の供述を採用しなかったものである。
あてはめ
まず、原判決は被控訴本人の供述を「信用できない」として排斥しており、その供述を事実認定の根拠として用いていない。したがって、尋問がなされていないとしても、その不実施が事実認定の結論に影響を与えることはない。次に、上告人の本人尋問申請については、原審の最終口頭弁論調書によれば、上告人自身がこれを放棄したものと認められる。自ら放棄した証拠調べを行わなかったことに、何ら違法な点はない。
結論
原判決に事実認定のプロセスにおける違法はなく、上告は棄却される。
事件番号: 昭和32(オ)612 / 裁判年月日: 昭和36年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法94条2項の適用における善意・無過失の要否について、原審が認定した事実に基づき、相手方が善意かつ無過失であれば保護されることを前提に上告を棄却した。 第1 事案の概要:上告人が、被上告人に対し、何らかの権利関係(詳細は判決文からは不明)につき虚偽の表示や悪意の存在を主張して争った事案。原審は、…
実務上の射程
証拠調べの申請放棄の効果と、排斥された証拠の重要性の判断基準を示す。実務上、尋問等の証拠調べが行われなかったことを理由とする上告理由に対し、当該証拠が結論に影響しないこと、または申請の放棄があったことをもって反論する際の指針となる。
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
事件番号: 昭和33(オ)962 / 裁判年月日: 昭和35年8月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、当事者が主張していない事実や法的構成について、特定の主張を促すべき釈明義務を当然に負うものではない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実とは異なる事実を前提として、原裁判所が当事者に対して特定の主張を促す義務(釈明義務)を負うべきであったと主張して上告した。判決文からは具体…
事件番号: 昭和30(オ)648 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当の理由」の有無は、事実認定の問題であり、原審が証拠に基づいてこれを否定した判断は違法ではない。 第1 事案の概要:上告人の代理人Dが、訴外Eに被上告人を代理して本件土地を売却する権限があるものと信じて取引を行った。上告人は、Dがそのように信じたことについて「正当の理由…
事件番号: 昭和31(オ)172 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記は物権変動の対抗要件にすぎず、第三者が登記名義を有しない実体上の所有者を認め、登記名義人への権利帰属を否認することは妨げられない。また、未登記不動産の譲受人が直接自己名義で行った所有権保存登記は、現在の権利状態と符合する限り有効である。 第1 事案の概要:本件土地は実質的にA1の所有であ…