判旨
民法94条2項の適用における善意・無過失の要否について、原審が認定した事実に基づき、相手方が善意かつ無過失であれば保護されることを前提に上告を棄却した。
問題の所在(論点)
民法94条2項等の適用に関連し、保護される第三者の主観的要件として「善意・無過失」が必要か、また第2審判決の原本ではなく正本が上告審に送付される手続に違法があるか。
規範
虚偽表示(民法94条)の類推適用ないし適用場面において、第三者が保護されるためには、原則として「善意」であれば足りるが、本判決当時の実務・判断枠組みとしては、事案の性質に応じて「無過失」まで要求される場合があることを前提としている。
重要事実
上告人が、被上告人に対し、何らかの権利関係(詳細は判決文からは不明)につき虚偽の表示や悪意の存在を主張して争った事案。原審は、被上告人において、上告人が主張するような悪意はなく、かつ過失もなかったと事実認定した。これに対し、上告人が原審の証拠取捨選択の不当や、判決原本が記録に添付されていない等の訴訟手続上の違法を理由に上告した。
あてはめ
実体法上の論点については、原審が被上告人において「悪意も過失もなかった」と事実認定しており、この認定は適法な証拠取捨に基づくものである。したがって、善意のみならず無過失までも備えている以上、保護の要件を満たすことは明らかであり、上告人の主張はその前提を欠く。また、訴訟手続については、第2審の判決原本は当該裁判所に保存され、上告審へは正本を送付することが従来の慣例であり、これに反する違憲・違法はない。
結論
被上告人に悪意および過失がないと認められる以上、上告理由はその前提を欠き、棄却される。また、判決正本による記録送付手続も適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和32(オ)619 / 裁判年月日: 昭和34年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法110条にいう「正当の理由」とは、第三者(相手方)において代理人に権限があると信ずるにつき過失がないことを意味し、過失がある場合には表見代理は成立しない。 第1 事案の概要:上告人(相手方)は、代理権を欠く者との間で取引を行ったが、原審において、当該代理人に権限があると信ずるにつき上告人に過失…
本判決は、94条2項の第三者の要件として無過失まで備わっている場合には当然に保護されることを示したものである。司法試験においては、94条2項類推適用等の場面で、帰責性の程度に応じて無過失まで必要とするか(権利外観法理)を論じる際の、事実認定の充足性を確認する資料として機能する。
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…
事件番号: 昭和32(オ)742 / 裁判年月日: 昭和32年11月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】文書上の印影が本人または代理人の印章によるものと認められるときは、民事訴訟法228条4項(旧326条)により、その文書は真正に成立したものと推定される。また、農地の贈与契約は、農地法による知事の許可があった日に確定的に効力を生じる。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間で農地の贈与契約が締結され…
事件番号: 昭和31(オ)932 / 裁判年月日: 昭和32年6月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者本人の供述を信用できないとして排斥した場合、当該供述に基づいて事実を認定したわけではないため、実際に尋問が行われていなくとも判決の結論に影響を及ぼさない。また、尋問申請を放棄したと認められる場合には、手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:上告人(被控訴人)は、原審において本人尋問が…
事件番号: 昭和42(オ)99 / 裁判年月日: 昭和44年5月27日 / 結論: 棄却
甲が乙の承諾のもとに乙名義で不動産を競落し、丙が善意で乙からこれを譲り受けた場合においては、甲は、丙に対して、登記の欠缺を主張して右不動産の所有権の取得を否定することはできない。