判旨
主文において複数人に対し一括して金員の支払を命じている場合でも、判決理由の説示に照らして各人への分割支払の趣旨であることが明白であれば、その趣旨の判決として有効である。
問題の所在(論点)
1. 判決主文において複数人に対する支払額を合算して表記することが、判決の不明確な不備として破棄事由となるか。2. 当事者本人が出頭しない場合に証拠決定を取り消すことが、裁判所の裁量を逸脱し違憲となるか。
規範
判決主文の解釈にあたっては、主文の文言のみならず、判決理由の説示内容と対照してその真意を確定すべきである。また、証拠決定の取消しについては、当事者本人が正当な理由なく出頭せず、かつ当該証拠が唯一の証拠方法でない場合には、裁判所の合理的な裁量に属する。
重要事実
第一審判決は、主文において「被告は原告両名に対し、19万200円及びこれに対する遅延損害金を支払え」と判示したが、判決理由の中では各原告に対して各9万5100円を支払うべき旨を説示していた。また、原審は上告人本人の尋問を証拠決定していたが、上告人が正当な理由なく証拠調べ期日に出頭しなかったため、当該証拠決定を取り消した。上告人は、主文の記載が不明確であることや、証拠決定の取消しが差別的で違憲であること等を理由に上告した。
あてはめ
1. 本件判決主文は「原告両名に対し19万200円」とあるが、判決理由の説示と対照すれば、各原告に9万5100円ずつ支払うよう命じた趣旨であることは明らかであり、内容が不明確とはいえない。2. 上告人本人が証拠調べ期日に出頭しなかった理由は正当とは認められず、かつ本人尋問が「唯一の証拠方法」でもなかった。したがって、証拠決定を取り消した原審の判断に不合理な点はなく、差別的な趣旨も認められない。
結論
判決主文は理由との対照によりその趣旨が明確であり、また証拠決定の取消しも適法であるから、上告を棄却する。
実務上の射程
判決主文の解釈において理由中の説示を補完的に用いることを認めた事例。実務上、主文の記載に疑義がある場合でも、理由中の認定や計算根拠から一義的に解釈可能であれば、判決が無効となったり破棄されたりすることはないことを示している。
事件番号: 昭和31(オ)620 / 裁判年月日: 昭和32年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が複数の証拠を総合して事実認定を行う際、特定の証人が唯一の証拠方法でないことが明らかであれば、その証拠調べの要否に関する訴訟手続上の違法は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、原審の事実認定に訴訟法違反があると主張した。具体的には、証人Dの証言等に関連して、証拠調べの手続や事実認定の合…