原審認定の事実関係のもとにおいては、甲四号証(債権譲渡通知書)の記載のみならず、右通知のなされるにいたつた経緯、とくに右通知を必要とするにいたつた基礎となる請求権の発生その他の法律関係の発生の経過等についても審理探究し、その他の証拠資料をも綜合して判定すべきであるのに、右の点について審理判断することなく、本訴請求権の譲渡通知はなされていないと認定したのは、違法である。
債権譲渡の通知に審理不尽の違法が存するとされた事例
民法117条,民法467条,民法555条
判旨
債権譲渡の通知が特定の請求権を対象としているか否かは、通知書の文言のみならず、通知に至った経緯や基礎となる法律関係等の事情を総合して判断すべきである。
問題の所在(論点)
債権譲渡通知の対象範囲を確定するにあたり、通知書の文言以外の事情(通知に至った経緯等)を考慮すべきか。債権譲渡の対抗要件(民法467条)に関連する意思表示の解釈手法が問題となった。
規範
債権譲渡通知(民法467条1項)の存否およびその範囲の解釈にあたっては、通知書に記載された文言のみに拘泥すべきではない。当該通知がなされるに至った経緯、その必要性の基礎となった請求権の発生過程、その他付随する法律関係の発生経過等の諸事情を審理・探究し、これらを総合して判定すべきである。
重要事実
訴外Dから被上告人の先代亡Eに対し、昭和29年9月16日付で債権譲渡通知書(甲4号証)が送付された。上告人は、この通知には民法117条に基づく無権代理人の責任としての請求権の譲渡も含まれていると主張した。しかし、原審は当該通知書の文言のみを根拠として、当該請求権の譲渡通知があった事実を認められないと判断し、上告人の請求を排斥した。
あてはめ
本件において、原審は通知書(甲4号証)の文言のみを依拠して判断しているが、これは不十分である。具体的には、当該通知がなされるに至った経緯や、その基礎となる請求権の発生原因となった法律関係の経過について審理を尽くすべきであった。これらの諸事情と証拠資料を総合的に評価すれば、文言上は直接表現されていなくても、民法117条の請求権譲渡を包含する趣旨の通知であったと認定される可能性がある。
結論
通知書の文言のみから譲渡通知の事実を否定した原審の判断には、審理不尽または解釈の誤りによる違法がある。したがって、原判決を破棄し、通知の経緯等についてさらに審理させるため本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
対抗要件としての譲渡通知の有効性や範囲が争われる場合、通知書という書面の内容のみならず、背後にある譲渡契約の成立過程や原因関係をあてはめに用いるべきであるという指針を示す。実務上、通知書の記載が不備であっても、取引経緯から対象債権が特定可能であれば対抗要件を具備したと主張する際の論拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)88 / 裁判年月日: 昭和32年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権譲渡の通知があったことについて当事者間に争いがない場合には、反証のない限り、その前提となる債権譲渡の事実を推認するのが相当である。 第1 事案の概要:被上告人(譲受人)が債権譲渡を主張したのに対し、上告人(債務者)は第一審の口頭弁論において、債権譲渡の内容証明郵便を受領したことだけでなく、被上…