判旨
人身保護法に基づく救済請求事件の判決において、事実を認定する際には、当事者間に争いがないこと、または顕出された疎明によって認める理由を必ず判示しなければならない。
問題の所在(論点)
人身保護法上の救済請求事件の判決において、事実認定の根拠や当事者の争いの有無を判示せずに事実を認定することは、証拠法則ないし理由付記の義務に違反するか。
規範
人身保護法15条、23条、人身保護規則46条に照らし、事実を認定する場合には、①当事者間に争いがないこと、または②争いがある事実については法廷に顕出された疎明によってこれを認めることの理由を判示しなければならない。これらを欠く認定は、事実認定の法則または証拠法則に違反し、判決に理由を付さない違法がある。
重要事実
拘束者らが被拘束者を暴力的に病院から奪取し、不当に拘束したとして人身保護請求がなされた事件において、原審は「被拘束者が軽微な精神障害者であり狂暴性がないこと」「拘束者が財産目当てで拉致したこと」等の事実を認定した。しかし、原判決はこれらの事実の認定にあたり、当事者間に争いがない旨の記載も、認定の根拠となる疎明資料の摘示も一切行わなかった。
あてはめ
原判決が保護請求を理由ありとするために認定した「被拘束者の精神状態」「拘束の経緯」「拘束者の動機」等の主要な事実について、原判決理由中には「当事者間に争いがないから認める」との記載も、また「いかなる疎明によって認めるか」という理由の判示も全く存在しない。これは、争いの有無を判断せず、あるいは疎明によらずに事実を認定したものであり、事実認定の法則に違反するとともに、判決に必要な理由を付さない違法があるといえる。
結論
原判決には事実認定の法則違反および理由不備の違法があるため、破棄を免れない。本件を地方裁判所に差し戻す。
実務上の射程
人身保護手続という迅速性が求められる手続であっても、適正手続の観点から、認定根拠の明示(疎明資料の摘示等)という基本的な裁判上の規律が厳格に適用されることを示したものである。答案上は、理由不備や証拠法則違反の具体例として、また人身保護手続の適正化の文脈で活用できる。
事件番号: 昭和31(ク)163 / 裁判年月日: 昭和31年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済は、身体の自由を拘束する裁判等の手続が権限なしになされ、又は法令の定める方式・手続に対する違反が顕著である場合に限られる。適式有効な令状に基づく拘束については、特段の事情がない限り、右の顕著な法令違反があるとはいえない。 第1 事案の概要:抗告人は、身体の自由を拘束されていると…
事件番号: 昭和24(ク)58 / 裁判年月日: 昭和24年12月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】人身保護法上の請求において、法および規則が定める疎明資料の提出義務等は合憲であり、裁判所が職権で資料を獲得すべきとの主張は採用されない。 第1 事案の概要:抗告人は、人身保護法および規則が定める疎明資料等の提出義務は、請求の道を閉ざし実益を失わせるものであると主張した。そのため、裁判所は法1条の目…