被拘束者が不法入国による退去強制処分の確定した朝鮮人を母としその不法入国後本邦において出生した幼児であること、退去強制令書に退去強制を受くべき者の表示として被拘束者が右母と共に記載されていること、その他原審判示の事実関係のもとにおいては、未だ人身保護規則第四条の「拘束が権限なしにされていることが顕著である場合」に当らないと認めるのが相当である。
人身保護規則第四条の「拘束が権限なしにされていることが顕著である場合」に当らない一事例
人身保護法2条,人身保護規則4条,出入国管理令51条
判旨
人身保護法に基づく釈放請求が認められるためには、拘束が法律上権限なしになされていることが顕著であることを要する。退去強制令書の理由記載に形式上の不備があっても、前提手続で理由が明らかな場合は、直ちに同法4条の「顕著な違法」には当たらない。
問題の所在(論点)
退去強制令書において、被拘束者本人の退去強制理由の直接的な記載が遺脱されている場合、人身保護規則4条にいう「拘束の権限なしになされていることが顕著である場合」に該当するか。
規範
人身保護規則4条にいう「拘束の権限なしになされていることが顕著である場合」とは、拘束の根拠となる公権力の行使が、単に違法であるのみならず、その違法性が客観的に明白であることを要する。また、退去強制令書における理由記載の要否は、審理の過程や前提手続(違反調書や裁決書)の内容を総合し、処分の実質的根拠が被拘束者に示されているか否かによって判断される。
重要事実
被拘束者B(3歳の幼児)は、不法入国で退去強制処分が確定した母Dの子として本邦で出生した。入国管理当局は、幼児の違反処理に関する通達に基づき、Bを母Dの「随伴者」として一貫して処理した。発付された退去強制令書には、Dについては理由が記載されていたが、BについてはDの随伴者として氏名・性別・生年月日が記載されているのみで、B自身の退去強制理由は直接記載されていなかった。B側は、理由記載の欠如は出入国管理令(当時)51条の方式に違反し無効であるとして、人身保護法に基づき釈放を求めた。
あてはめ
本件において、Bは満3歳の幼児であり、審理手続は一貫して母Dの随伴者として処理されていた。退去強制令書の発行前提となる入国警備官の違反調書および法務大臣の裁決書においては、Bが法令(出入国管理令24条7号)に該当する者であることが明らかにされていた。このような事実関係の下では、令書に直接の理由記載がなくとも、母Dの随伴者として特定事項を記載することで足りると解される。したがって、当該令書が当然に無効であるとはいえず、拘束の権限がないことが客観的に明白であるとは認められない。
結論
本件拘束は「拘束の権限なしになされていることが顕著である場合」には当たらない。したがって、釈放請求は棄却される。
実務上の射程
行政処分に基づく拘束に対し、人身保護法で争う際の「顕著な違法性」のハードルの高さを示す。手続上の形式的な瑕疵(理由不備)があっても、実質的な理由が他の関連資料で補完されている場合には、同法による救済対象とはなりにくいことを示唆している。
事件番号: 昭和32(オ)227 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: 棄却
一 法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている者について、人身保護法によつて救済を請求することができるのは、その拘束または拘束に関する裁判若しくは処分が権限なしになされまたは法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著な場合に限られる 二 人身保護制度は、同棲関係のあつた婦女の連れ子として幼児…