人身保護法により救済を請求することができるのは、被拘束者の拘束または拘束に関する裁判もしくは処分が権限なしにされ、または法令の定める方式もしくは手続に著しく違反していることが顕著な場合に限る。
人身保護請求の要件
人身保護法2条,同規則3条
判旨
人身保護法による救済が認められるのは、拘束等が権限なしにされ、または法令の定める方式・手続に著しく違反していることが顕著である場合に限られる。
問題の所在(論点)
人身保護法2条1項にいう「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている」として救済を請求できる要件(人身保護規則4条)の範囲が問題となる。
規範
人身保護法により救済を請求できるのは、法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている者で、その拘束または拘束に関する裁判もしくは処分が「権限なしにされ」または「法令の定める方式もしくは手続に著しく違反していることが顕著」である場合に限られる。
重要事実
不法入国が発覚した被拘束者は、入国審査官が発付した外国人退去強制令書の執行を受け、横浜入国者収容所に拘束された。被拘束者は、当該令書が司法官憲の関与を欠き憲法33条、34条の趣旨に反する等と主張して、人身保護法に基づき釈放を求めた。
あてはめ
本件における拘束は、出入国管理令52条等に基づき、適法に発付された退去強制令書の執行として行われている。被拘束者は憲法違反を主張するが、行政手続に基づく拘束の事実関係に照らせば、当該拘束が権限を逸脱してなされたもの、あるいは手続上の著しい違反が客観的に明白(顕著)なものとは認められない。
結論
本件拘束は、権限の欠如や手続の著しい違反が顕著である場合に該当しないことが明白である。したがって、請求者の主張の当否(違憲性の実体判断)に立ち入るまでもなく、請求を棄却すべきである。
実務上の射程
人身保護法による救済を求める際の「顕著な違法」要件を確認した判例である。司法試験においては、行政処分や裁判による拘束の効力を争う際、人身保護手続が「通常の不服申立て」の代用とはならず、明白かつ重大な瑕疵が必要とされることの根拠として引用すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)227 / 裁判年月日: 昭和33年5月28日 / 結論: 棄却
一 法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されている者について、人身保護法によつて救済を請求することができるのは、その拘束または拘束に関する裁判若しくは処分が権限なしになされまたは法令の定める方式若しくは手続に著しく違反していることが顕著な場合に限られる 二 人身保護制度は、同棲関係のあつた婦女の連れ子として幼児…
事件番号: 昭和31(ク)163 / 裁判年月日: 昭和31年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】人身保護法による救済は、身体の自由を拘束する裁判等の手続が権限なしになされ、又は法令の定める方式・手続に対する違反が顕著である場合に限られる。適式有効な令状に基づく拘束については、特段の事情がない限り、右の顕著な法令違反があるとはいえない。 第1 事案の概要:抗告人は、身体の自由を拘束されていると…
事件番号: 昭和44(オ)698 / 裁判年月日: 昭和44年9月30日 / 結論: 棄却
一、夫婦関係が破綻に瀕している場合に、夫婦の一方が他方に対し人身保護法に基づき共同親権に服する幼児の引渡を請求したときには、幼児の拘束がいかなる手段、方法により開始されたかということよりも、幼児を夫婦のいずれに監護させるのが幼児のために幸福であるかを主眼として、その拘束の違法性の有無を判定し、右請求の許否を決すべきであ…