判旨
戸籍法に基づき縁組の届出が受理されている場合には、特段の事情がない限り、有効な縁組に必要な親族会の同意等の法的要件が具備されていたものと事実上推定される。
問題の所在(論点)
養子縁組の届出が受理されている場合、その成立要件(本件では代諾に付随する親族会の同意)の存在について、どのような立証上の取り扱いがなされるべきか。
規範
戸籍法(明治31年法律12号)により、民法上の要件として親族会の同意を要する届出を行う際には、同意を証する書面を添付することが義務付けられている。したがって、行政庁によって届出が一応受理されている以上、当該同意等の要件は充足されていたものと事実上推定するのが相当である。これを覆すには、要件を欠いていたことを示す特段の反証を要する。
重要事実
大正3年、上告人の先代であるB夫妻と訴外Dとの間で養子縁組がなされた。Dの継父であるEが代諾したが、この代諾には親族会の同意が必要であった。上告人は、当該同意が欠如しており縁組は無効であると主張した。一方、本件縁組の届出は当時受理され、戸籍に記載されていた。
あてはめ
本件養子縁組の届出は一応受理されている。当時の戸籍法87条に基づけば、親族会の同意を要する場合にはその証書を添えることが要求されていた。受理されたという事実は、届書に適切な同意書が添付されていた蓋然性が極めて高いことを意味する。本件において、上告人からこの推定を覆すに足りる具体的な反証がなされたとは認められない。
結論
本件養子縁組は有効に成立したものと認められる。したがって、原判決の事実に推定を認めた判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
行政処分(受理)の適法性に基づく事実上の推定を認めた判例である。身分法上の行為だけでなく、届出を要件とする法的地位の存否が争われる場面において、立証責任の転換に近い効果(反証がない限りの事実上の推定)を認める際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和28(オ)805 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
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事件番号: 昭和30(オ)544 / 裁判年月日: 昭和31年10月4日 / 結論: 棄却
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