判旨
未成年者の婚姻において父母の同意を欠く場合であっても、戸籍吏が届出を受理したときは、適法に取消されない限り、婚姻は有効に成立する。また、婚姻届受理前に当事者の一方が死亡したとしても、その受理によって死亡時に遡って婚姻の効力が生じるものではないが、受理された以上は有効な婚姻として存続する。
問題の所在(論点)
未成年者の婚姻において父母の同意を欠くまま届出が受理された場合、その婚姻の効力はどうなるか。また、受理前に当事者の一方が死亡していた場合の効力はどう解すべきか。
規範
婚姻は父母の同意を欠く場合であっても、戸籍吏がこれを受理したときは、その後に取消権者によって取消されない限り、有効に成立する。また、婚姻届の受理により、婚姻の効力は届出の時に遡って生じる(旧民法及び現行法の基本的考え方)。
重要事実
未成年者である当事者が婚姻届を提出したが、当事者の一方(D)が死亡した。この婚姻には父母の同意が欠けていたが、戸籍吏によって届出が受理された。上告人は、父母の同意がないこと、および受理前に死亡していることを理由に、婚姻の無効または効力の不発生を主張した。なお、同意権者による取消請求がなされた事実は認められなかった。
あてはめ
本件婚姻は父母の同意を欠いていたが、戸籍吏が受理した以上、取消されない限り有効である。本件において同意権者による取消しの主張立証はない。また、当事者の死亡後に婚姻の効力が発生することはないが、受理された届出によって、Dの死亡時において既に婚姻は有効に存続していたものとみなされる(適法な受理による遡及的効力)。さらに、嫡出子として入籍する場合には戸主の同意(旧法下の論点)も不要であると解される。
結論
本件婚姻は有効であり、被上告人は嫡出子としての身分を取得する。上告人の主張は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
婚姻の成立要件(同意)と有効要件(受理)の関係を示す。届出の受理という形式的事実が、実質的な欠陥(同意欠如)を治癒し、取消されない限り有効なものとして扱うという戸籍制度の安定性を重視する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)602 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戸籍法に基づき縁組の届出が受理されている場合には、特段の事情がない限り、有効な縁組に必要な親族会の同意等の法的要件が具備されていたものと事実上推定される。 第1 事案の概要:大正3年、上告人の先代であるB夫妻と訴外Dとの間で養子縁組がなされた。Dの継父であるEが代諾したが、この代諾には親族会の同意…
事件番号: 昭和49(オ)861 / 裁判年月日: 昭和50年4月8日 / 結論: 棄却
養子とする意図で他人の子を嫡出子として出生届をしても、右出生届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできない。
事件番号: 昭和28(オ)805 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戸主による家督相続人の指定は、指定権者にその決意があると認められ、かつ、その旨の届出が市町村長に受理された場合には、その効力を有する。 第1 事案の概要:戸主Dは、死亡前の十数年間にわたりEと事実上の夫婦関係にあった。Dは、Eの実弟である被上告人を自らの家督相続人に指定する決意を有していた。昭和1…