養子とする意図で他人の子を嫡出子として出生届をしても、右出生届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできない。
虚偽の嫡出子出生届と養子縁組の成否
旧民法775条,旧民法847条,旧民法851条2号,民法739条,民法799条,民法802条2号
判旨
他人の子を嫡出子として届け出た場合、当該出生届を養子縁組届として有効と解することはできず、また、財産権の帰属をめぐる訴訟において、前提問題として親子関係の存否を認定判断することができる。
問題の所在(論点)
1. 実親ではない者が子を嫡出子として出生届けを出した場合、当該届出を養子縁組届として有効と解することができるか。 2. 戸籍上の訂正や親子関係不存在確認の確定判決がない場合でも、他の訴訟の前提問題として親子関係の存否を認定できるか。
規範
1. 養子縁組は、法廷の届出によってその効力を生ずるものであり(民法799条、739条)、嫡出子出生届をもって養子縁組届とみなすことは許されない。 2. 他人の子を嫡出子として届け出た戸籍の記載に、親子関係の存在を確認した判決と同様の既判力は認められない。したがって、特定の訴訟において、前提問題として親子関係の存否を認定判断することは妨げられない。
重要事実
夫Dと妻(被上告人)は、他人の子である上告人を引き取り実子同様に養育していた。Dは上告人を自己と被上告人との間の嫡出子として出生届を出し、受理された。その後、上告人とD・被上告人との間の親子関係の存否が、財産権の帰属をめぐる訴訟において争点となった。
あてはめ
1. 養子縁組は厳格な要式行為であり、届出の方式が法定されている。本件では嫡出子出生届がなされたに過ぎず、養子縁組届としての方式を欠くため、これを養子縁組として有効と扱うことはできない。 2. 戸籍の記載は真実の親族関係を直ちに確定させるものではなく、また確定判決のような効力もない。本件のような財産権(相続等)の帰属を争う訴訟において、前提となる親子関係の有無を判断することは、人事訴訟の排他的管轄に抵触するものではない。
結論
嫡出子出生届を養子縁組届とみなすことはできず、上告人とD・被上告人との間に親子関係は認められない。また、本件訴訟において親子関係の存否を判断することは適法である。
実務上の射程
「虚偽の嫡出子出生届」がなされた事案における標準的な判例である。答案上は、(1)転換の否定(養子縁組の成立を否定)、(2)前提問題としての親子関係判断の可否、という2つの局面で使用できる。特に、身分行為の要式性を重視する論理として重要である。
事件番号: 昭和30(オ)853 / 裁判年月日: 昭和31年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実認定の過程における瑕疵や、証拠の採否、事実認定に関する不服は、上告理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が乙第2号証の成立を不法に認めた点や、亡Dとその妻Eが被上告人と婿養子縁組をした事実に争いがないとした判示に誤りがあるとして上告した。しかし、原判決は当…
事件番号: 平成16(受)443 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: 破棄差戻
丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡す…