朝鮮民事令(明治四五年制令第七号)の適用をうける朝鮮人が、他人の子を養子とする意図のもとに嫡出子として届け出ても、それによつて養子縁組が成立するとはいえない。
朝鮮民事令(明治四五年制令第七号)の適用をうける朝鮮人が他人の子を養子とする意図でした虚偽の嫡出子出生届と養子縁組の成否
朝鮮民事令(明治45年制令第7号)11条2項,民法739条,民法799条,民法802条2号
判旨
養子縁組の意思で他人の子を嫡出子として届け出た虚偽の出生届は、身分行為の要式性が果たす機能を重視する観点から、養子縁組としての効力を生じない。身分関係の形成においては戸籍制度に基づく公示や実質的成立要件の遵守が不可欠であり、届出後の親子的共同生活の継続という事実があっても、その結論は左右されない。
問題の所在(論点)
養子縁組の意思をもってなされた他人の子の「虚偽の嫡出子出生届」に、養子縁組届としての効力を認め、法律上の養親子関係の成立を肯定できるか。特に、当時の朝鮮民事令等が定める要式性の要請と、実質的な親子生活の継続という事実をどう評価すべきかが問題となる。
規範
身分行為の要式性は、戸籍制度と相まって創設される身分関係を公示し、実質的成立要件(縁組意思の合致や後見的役割の担保等)の遵守を確実にすることを目的とする。したがって、たとえ養子縁組の意思があり、届出後に親子的共同生活が継続したとしても、法が定める縁組届出の方式を欠く「虚偽の嫡出子出生届」に養子縁組としての効力を認めることは、身分関係の画一的処理の要請に照らし、許されない。
重要事実
韓国人夫妻D・Hは、他人の子である被上告人を貰い受け、実子として虚偽の出生届を提出した。被上告人はDの死亡時まで実子と信じて養育され、実質的な親子生活を継続していた。Dの死後、Dの遺産である本件土地について被上告人名義の相続登記がなされたが、Dの認知した実子である上告人らが、被上告人には相続権がないとして登記の無効を訴えた。
事件番号: 昭和49(オ)861 / 裁判年月日: 昭和50年4月8日 / 結論: 棄却
養子とする意図で他人の子を嫡出子として出生届をしても、右出生届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできない。
あてはめ
身分法上の届出は、単に意思を外部に示すだけでなく、戸籍による公証や不適当な縁組の阻止という公益的機能を有する。本件では、Dの出生届は縁組当事者の合致を直ちに明確にするものではなく、韓国民法上、実親子と養親子では相続権や氏の扱いに重大な差異がある。実質的な共同生活の継続をもって縁組の成立を認めれば、身分関係の成立時期が不安定となり、画一的処理を妨げる。したがって、方式を欠く本件届出は無効である。
結論
被上告人とDとの間に法律上の養親子関係は成立しない。被上告人はDを相続できず、本件土地の所有権移転登記は実体関係に符合しない無効なものである。
実務上の射程
実親子関係と養親子関係の峻別を強調し、身分行為における要式性の厳格さを維持した判例である。答案上では、戸籍法や民法が定める方式を無視した身分行為の効力を否定する根拠として用いる。ただし、日本法下の事案では「虚偽の出生届」を「認知」の届出として転換することを認める判例(大判大15.10.11)等もあるため、身分行為の種類や準拠法による違いに留意が必要である。
事件番号: 平成16(受)443 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: 破棄差戻
丁の遺言書中の特定の遺産を一部の親族に遺贈等をする旨の条項に続く「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」との条項について,丁は,その妻戊との間に子がなかったため,丁の兄夫婦の子甲を実子として養育する意図で丁戊夫婦の嫡出子として出生の届出をしたこと,丁と甲とは,遺言書が作成されたころを含めて,丁が死亡す…
事件番号: 昭和27(オ)873 / 裁判年月日: 昭和29年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】夫婦がその嫡出子でない子を嫡出子として届け出た場合であっても、右届出をもって養子縁組届とみなすことはできない。 第1 事案の概要:夫婦(上告人ら)が、自分たちの嫡出子ではない児童を、実子として戸籍上の嫡出子出生届を提出した。その後、当該届出を養子縁組の届出として有効と解すべきか、あるいは養子縁組と…