判旨
夫婦がその嫡出子でない子を嫡出子として届け出た場合であっても、右届出をもって養子縁組届とみなすことはできない。
問題の所在(論点)
実子でない子を嫡出子として出生届を出した場合に、当該届出を養子縁組の届出とみなして、養子縁組の効力を認めることができるか。
規範
夫婦が他人の子を自己の嫡出子として虚偽の届出をした場合、その届出は嫡出子としての身分関係を創設する効力を有しない。また、戸籍法上の養子縁組届という適法な形式を欠く以上、身分行為の厳格な要式性に鑑み、これを養子縁組の届出とみなして養子縁組の効力を認めることもできない。
重要事実
夫婦(上告人ら)が、自分たちの嫡出子ではない児童を、実子として戸籍上の嫡出子出生届を提出した。その後、当該届出を養子縁組の届出として有効と解すべきか、あるいは養子縁組としての効力を認めるべきかが争われた。なお、本判決文(理由)には詳細な事実関係の記載が乏しいが、原審までの判断を維持する形式となっている。
あてはめ
民法上の身分関係、特に親子関係の創設においては、戸籍法に基づく適法な届出が要求される(要式性)。直系尊重の民法の趣旨に照らせば、嫡出子としての出生届は実子関係を前提とするものであり、養子縁組の意思が含まれていたとしても、養子縁組届としての方式を具備していない。したがって、虚偽の出生届をもって養子縁組の成立を認めることは、身分法の秩序を乱すものであり、相当ではないと判断される。
結論
嫡出子でない子を嫡出子として届け出た場合、その届出を養子縁組の届出とみなすことはできず、養子縁組は成立しない。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「藁人形の養子縁組」の有効性を否定したリーディングケースである。答案上は、身分行為の要式性を論じる際に、実子としての出生届に養子縁組の効力を認めない(届出の転換を否定する)根拠として引用する。ただし、後に最高裁は、長期間の養育実態がある等の事情により、追認や信義則の観点から解決を図る場合もある点に注意を要する。
事件番号: 昭和43(オ)520 / 裁判年月日: 昭和49年12月23日 / 結論: 破棄自判
朝鮮民事令(明治四五年制令第七号)の適用をうける朝鮮人が、他人の子を養子とする意図のもとに嫡出子として届け出ても、それによつて養子縁組が成立するとはいえない。
事件番号: 昭和49(オ)861 / 裁判年月日: 昭和50年4月8日 / 結論: 棄却
養子とする意図で他人の子を嫡出子として出生届をしても、右出生届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできない。