判旨
戸主による家督相続人の指定は、指定権者にその決意があると認められ、かつ、その旨の届出が市町村長に受理された場合には、その効力を有する。
問題の所在(論点)
旧民法下の家督相続人の指定において、指定権者の内心的決意と届出の受理という事実がある場合に、当該指定の効力が認められるか。
規範
家督相続人の指定(旧民法979条)の効力が認められるためには、指定権者(戸主)に特定の者を家督相続人に指定する真実の決意が存在すること、および、その指定の届出が適法に受理されることを要する。
重要事実
戸主Dは、死亡前の十数年間にわたりEと事実上の夫婦関係にあった。Dは、Eの実弟である被上告人を自らの家督相続人に指定する決意を有していた。昭和16年3月27日、D名義で「被上告人を家督相続人に指定する」旨の届出がなされ、町長によって受理された。その後、この指定の効力が争われた。
あてはめ
本件において、DはEの実弟である被上告人を相続人と決めていたという内心的決意が証拠に基づき認定されている。また、D名義の指定届が町長に受理された事実に争いはない。これらの事実関係を総合すれば、指定の有効要件を満たしていると評価できる。
結論
本件家督相続人の指定は有効であり、被上告人が家督相続人としての地位を有する。
実務上の射程
旧法下の家督相続に関する判断であるが、身分上の行為における「真意」の認定と「届出の受理」という形式的要件の具備が効力発生に決定的な役割を果たすことを示す事例である。
事件番号: 昭和24(オ)302 / 裁判年月日: 昭和26年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧慣等に基づく家督相続人の指定において、当該指定がなされた事実に加え、指定者にその意思を欠く事情が認められない場合には、適法な指定があったものと解される。 第1 事案の概要:上告人において、本件家督相続人の指定が自らの意思に基づかないものであると主張し、原判決の事実認定に経験則違背があるとして争っ…
事件番号: 昭和27(オ)990 / 裁判年月日: 昭和30年1月21日 / 結論: 棄却
法定の推定家督相続人がその相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属は代襲相続をする権利を有しない。
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。
事件番号: 昭和24(オ)70 / 裁判年月日: 昭和25年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親族会員が、家督相続人の選定という決議事項の当事者の内縁の夫であっても、そのことのみをもって当該決議事項につき直接利害関係を有することにはならず、除斥の対象とはならない。 第1 事案の概要:亡Dの家督相続人を選定する親族会において、被上告人が候補者として選定されるかどうかの決議が行われた。この親族…
事件番号: 昭和25(オ)190 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】隠居時の財産留保の意思表示は、隠居の前に確定日付ある証書でなされれば足り、隠居時までその意思が持続していると認められる限り、確定日付から隠居まで時間的間隔があっても有効である。また、財産留保が遺留分を侵害しているとの主張は抗弁であり、それを主張する側に主張・立証責任がある。 第1 事案の概要:上告…