判旨
旧慣等に基づく家督相続人の指定において、当該指定がなされた事実に加え、指定者にその意思を欠く事情が認められない場合には、適法な指定があったものと解される。
問題の所在(論点)
家督相続人の指定における指定者の意思の有無が争点となり、事実認定において上告人の意思を欠くものと認められるか否かが問題となった。
規範
家督相続人の指定という法律行為または事実に際し、指定行為がなされた事実が認められ、かつ、その意思形成過程において指定者の真意を欠くような客観的事由が認められない限り、当該指定は有効に成立する。
重要事実
上告人において、本件家督相続人の指定が自らの意思に基づかないものであると主張し、原判決の事実認定に経験則違背があるとして争った事案である。
あてはめ
原審が認定した諸事実に照らせば、本件家督相続人の指定が上告人の意思を欠くものとは認められない。上告人の主張する経験則違背の点は、証拠評価および事実認定の範疇に属するものであり、原判決の判断に不合理な点は見当たらない。
結論
本件家督相続人の指定は上告人の意思に基づくものと認められ、有効である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
家督相続という旧法下の制度に関する事案であるが、意思表示や指定行為の有効性について、事実認定レベルで意思の有無を判断する際の枠組みとして参照し得る。司法試験においては、意思の欠缺が主張される場面での事実認定の適法性を論じる際、経験則違背の有無という視点を示唆するものである。
事件番号: 昭和28(オ)805 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戸主による家督相続人の指定は、指定権者にその決意があると認められ、かつ、その旨の届出が市町村長に受理された場合には、その効力を有する。 第1 事案の概要:戸主Dは、死亡前の十数年間にわたりEと事実上の夫婦関係にあった。Dは、Eの実弟である被上告人を自らの家督相続人に指定する決意を有していた。昭和1…
事件番号: 昭和24(オ)267 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。 二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の…
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。
事件番号: 昭和27(オ)990 / 裁判年月日: 昭和30年1月21日 / 結論: 棄却
法定の推定家督相続人がその相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属は代襲相続をする権利を有しない。
事件番号: 昭和44(オ)1138 / 裁判年月日: 昭和45年3月3日 / 結論: 棄却
自己が家督相続人として選定されたことを理由として、戸籍簿上の家督相続人を排除し自己の家督相続人たる地位を回復することを目的とする請求は、戸籍簿上の家督相続人を相手方とする家督相続回復の訴によるべきであり、選定者を相手方として家督相続人たる地位の確認を求める訴は確認の利益を有しない。