一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。 二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の許可があつたときから有効となる。 三 裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨の決議をなした親族会が、右の決議に対する裁判所の許可前同一事項につき右の決議と内容において抵触する決議をしたときは、その決議は無効である。
一 旧民法第九八五条第三項の裁判所の許可の時期。 二 裁判所の許可を得ることを条件とする旧民法第九八五条第三項の親族会の決議の効力と右決議が有効となる時期。 三 旧民法第九八五条三項の裁判所の許可前同一親族会が同一事項につきなした前の決議(裁判所の許可を得ることを条件とする旧民法第九八五条第二項の決議)と内容において牴触する決議の効力。
旧民法985条3項
判旨
旧民法下の家督相続人選定における裁判所の許可は事後でも有効であり、許可を条件とする選定決議がなされた以上、不許可とならない限り親族会員はこれに拘束され、抵触する後発決議は無効となる。
問題の所在(論点)
旧民法985条3項に基づく家督相続人選定において、裁判所の許可を条件とする親族会の決議がなされた場合、その許可が出る前に、これと抵触する別の相続人を選定する決議を行うことができるか、あるいは先の決議の拘束力が認められるか。
規範
旧民法985条3項に基づく、他人を家督相続人に選定する場合の裁判所の許可は、親族会が決議をなした後において得ることも妨げられない。この場合、当該決議は許可の時から有効となる。また、許可を条件とする選定決議がなされた場合、それが裁判所により不許可とされない限り、決議をなした親族会員は当該決議に拘束され、これと内容が抵触する後発の決議をすることは許されず、なされたとしても無効である。
重要事実
亡Dの家督相続人を選定するため、昭和19年9月14日に親族会が招集された。親族会員である上告人ら及び被上告人は、裁判所の許可を得ることを条件として、Dの内縁の妻であったEを家督相続人に選定する旨の決議を行った。しかし、同年11月26日、上告人Aの招集により再び親族会が開かれ、Dの家督相続人としてFを選定する旨の別決議がなされた。上告人らは後発の決議に基づきFの相続人資格を主張したが、先のE選定決議が裁判所により不許可になったという事実は存在しなかった。
あてはめ
まず、本件の昭和19年9月14日の決議は「裁判所の許可を得ることを条件」としたものであり、旧民法下では事後の許可であっても有効である。したがって、許可が未だ得られていないというだけで直ちに無効とはならない。次に、かかる決議がなされた以上、当該事項が裁判所により不許可と確定しない限り、決議に参加した親族会員は自らが行った決議の内容に拘束される。本件において上告人らは、先のE選定決議が不許可になったとは主張していない。そうであれば、先の決議は依然として有効に成立し得る余地を残しており、これと明らかに内容が抵触する同年11月26日のF選定決議は、親族会員の拘束力に反するものであり無効と解される。
結論
後発のF選定決議は無効であり、Fが被相続人Dの親族であったとしても、当該決議によって直ちに家督相続人に確定することはない。上告棄却。
実務上の射程
旧民法下の制度に関する判断であるが、行政処分や裁判所の許可を停止条件とする私的合意・団体決議において、条件成就までの間の当事者の拘束力を論じる際の参考となり得る。特に「条件付決議」がなされた場合に、反対事情(不成就の確定)がない限り、同様の事項について抵触する処分・決議を禁止する信義則上の拘束力を認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。
事件番号: 昭和24(オ)70 / 裁判年月日: 昭和25年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親族会員が、家督相続人の選定という決議事項の当事者の内縁の夫であっても、そのことのみをもって当該決議事項につき直接利害関係を有することにはならず、除斥の対象とはならない。 第1 事案の概要:亡Dの家督相続人を選定する親族会において、被上告人が候補者として選定されるかどうかの決議が行われた。この親族…
事件番号: 昭和40(オ)467 / 裁判年月日: 昭和42年4月28日 / 結論: 棄却
新民法施行後は、旧民法によつてされた家督相続人選定親族会決議の無効確認を求める訴の利益はない。