裁判所が親族会召集の日時を誤つて告知した場合において、親族会員の一人が勝手に他の日時を定めて招集した親族会の決議は、親族会員全員に異議のない場合を除き無効である。
裁判所が親族会招集の日時を誤つて告知した場合において親族会員の一人が別に日時を定めて招集した親族会の決議の効力
旧民法944条,旧民法949条
判旨
裁判所が招集すべき親族会を会員の一部が勝手に招集した場合、会員全員が異議なく決議したなら有効となり得るが、会員の一人でも異議を述べたときは、その異議の正当性を問わず決議は無効となる。
問題の所在(論点)
裁判所の招集決定に基づかず、親族会員の一人が勝手に招集した親族会において、一部の会員が異議を述べている場合に、当該親族会がなした決議は有効か。
規範
法律により親族会の招集は裁判所がなすべきものとされている以上、裁判所の適法な招集手続を欠く親族会は原則として効力を生じない。もっとも、親族会という団体の性質に鑑み、会員全員が異議なくその期日に集まり決議した場合には、例外的にこれを有効と解する余地がある。しかし、会員のうち一人でも期日等について異議を述べた者が存する場合には、その異議に正当な事由があるか否かを問わず、当該親族会は適法に成立せず、その決議は無効であると解すべきである。
重要事実
安濃津区裁判所は家督相続人選定のための親族会招集を決定したが、会員の一人(F)に送達された決定書謄本の記載日時に誤りがあり、適法な告知がなされなかった。その後、裁判所による再度の招集手続が行われないまま、親族会員の一人が勝手に日時を定めて招集し、昭和19年7月4日に親族会が開催された。この際、親族会員の一人である上告人は、招集手続の瑕疵について異議を申し立てていたが、親族会は被上告人を家督相続人に選定する決議を強行した。
あてはめ
本件では、親族会員Fに対する適法な告知を欠く以上、裁判所の招集決定は厳格には効力を生じていない。また、現に行われた7月4日の親族会は裁判所が招集したものではなく、会員の一人が私的に日を定めたものである。上告人はこの手続に対し異議を主張している。親族間に紛争がある場合、特定の一派が自己に有利な場所・日時を強引に指定する弊害を避けるため、公平な裁判所による招集が必須である。異議を述べた者に「正当事由」の立証責任を課すことは、複雑な親族間の感情対立がある実態に照らし酷である。したがって、上告人が異議を述べている以上、手続的瑕疵を治癒する余地はなく、本件決議は無効と判断されるべきである。
結論
本件親族会決議には重大な手続上の欠陥があり、かつ会員の異議が存するため、これを取り消し(無効と)すべきである。
実務上の射程
法定の招集権者によらない団体の決議の効力を論ずる際の参考となる。特に、全員出席による瑕疵の治癒が認められない限界(一人でも反対者がいる場合)を示している点に意義がある。なお、新憲法下の男女平等・個人尊厳の理念に照らし、旧来の家制度に関わる決議を維持する必要性が乏しいとした点も、法の解釈指針として重要である。
事件番号: 昭和24(オ)267 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。 二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の…
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。
事件番号: 昭和24(オ)70 / 裁判年月日: 昭和25年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親族会員が、家督相続人の選定という決議事項の当事者の内縁の夫であっても、そのことのみをもって当該決議事項につき直接利害関係を有することにはならず、除斥の対象とはならない。 第1 事案の概要:亡Dの家督相続人を選定する親族会において、被上告人が候補者として選定されるかどうかの決議が行われた。この親族…