判旨
親族会員が、家督相続人の選定という決議事項の当事者の内縁の夫であっても、そのことのみをもって当該決議事項につき直接利害関係を有することにはならず、除斥の対象とはならない。
問題の所在(論点)
家督相続人の選定決議において、選定候補者の内縁の夫である親族会員は、当該決議事項について「直接の利害関係」を有する者に該当し、決議に加わることができないか(除斥の成否)。
規範
旧民法947条2項(現行の親族会規定は廃止されているが、現行法上の特別利害関係人の概念にも通ずる)にいう「決議事項について直接の利害関係を有する」とは、当該決議の結果によって、親族会員個人の法的地位や権利義務に直接的な影響が及ぶことを指す。単なる事実上の親疎関係や、当事者を通じて得られる反射的な利益、あるいは一時的な事実上の便宜などはこれに含まれない。
重要事実
亡Dの家督相続人を選定する親族会において、被上告人が候補者として選定されるかどうかの決議が行われた。この親族会の会員であるEは、被上告人の内縁の夫であった。また、Eは別の仮処分に基づき、上告人と被上告人が争っている家屋に被上告人と同居していた。上告人は、Eが被上告人の内縁の夫であり、同居の利益も有することから、旧民法947条2項の除斥事由に該当すると主張した。
あてはめ
まず、被上告人が選定されるか否かは被上告人自身の利害に関する事項であるが、その内縁の夫であるEにとって、選定の有無が当然にE自身の法的利害に直結するわけではない。次に、Eが係争中の家屋に居住している事実についても、当該仮処分は上告人と被上告人との間の所有権争いに伴う一時的な処置であり、Eの居住は被上告人の内縁の夫という立場から付随的に認められたものに過ぎない。したがって、Eが決議の結果により直接法的影響を受ける関係にあるとは認められず、評価として「直接利害関係をもつもの」とはいえない。
結論
Eは除斥事由に該当せず、親族会の決議に加わることができる。上告人の主張は理由がなく、棄却されるべきである。
事件番号: 昭和24(オ)267 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。 二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の…
実務上の射程
会社法上の特別利害関係人(369条2項等)や、管理組合の決議、一般社団法人の決議等における「特別の利害関係」の解釈においても、単なる親族関係や事実上の経済的利害ではなく、決議事項と個人の権利義務との直接的な関連性を要求する際の論拠として引用し得る。
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。
事件番号: 昭和28(オ)805 / 裁判年月日: 昭和30年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】戸主による家督相続人の指定は、指定権者にその決意があると認められ、かつ、その旨の届出が市町村長に受理された場合には、その効力を有する。 第1 事案の概要:戸主Dは、死亡前の十数年間にわたりEと事実上の夫婦関係にあった。Dは、Eの実弟である被上告人を自らの家督相続人に指定する決意を有していた。昭和1…
事件番号: 昭和40(オ)467 / 裁判年月日: 昭和42年4月28日 / 結論: 棄却
新民法施行後は、旧民法によつてされた家督相続人選定親族会決議の無効確認を求める訴の利益はない。