新民法施行後は、旧民法によつてされた家督相続人選定親族会決議の無効確認を求める訴の利益はない。
新民法施行後における旧民法による家督相続人選定親族会決議無効確認の訴の利益の有無
旧民法951条,旧民法985条,民法附則23条,民法附則25条,民訴法225条
判旨
旧民法下の家督相続人選定決議の無効確認を求める訴えについて、新民法への移行後は確認の利益が失われるとともに、相続回復請求権の20年の消滅時効は相続開始の時から進行する。
問題の所在(論点)
1. 新民法施行後において、旧民法下の家督相続人選定決議の無効確認を求める訴えに「確認の利益」が認められるか。 2. 相続回復請求権の20年の消滅時効の起算点はいつか。
規範
1. 過去の法律関係の確認を求める訴えであっても、それが現在の法的地位を確定し紛争を一挙に解決するために有効であれば確認の利益が認められる。しかし、法改正等により当該地位が消滅した場合には確認の利益は失われる。 2. 相続回復請求権(旧民法966条、993条)の20年の消滅時効期間は、相続権侵害の事実の有無にかかわらず、常に当該相続開始の時から進行する。
重要事実
被相続人Dが昭和12年8月13日に死亡し、同年9月17日に親族会の決議によって被上告人Bが家督相続人に選定された。これに対し、上告人らは当該選定決議は無効であると主張し、その無効確認を求めるとともに、予備的に相続回復を請求して提訴した。なお、訴訟継続中に民法改正が行われ、新民法附則25条2項の適用が問題となった。
事件番号: 昭和24(オ)267 / 裁判年月日: 昭和26年8月31日 / 結論: 棄却
一 家督相続人選定のために招集された親族会において、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げない。 二 家督相続人選定のために招集された親族会が、裁判所の許可を条件として他人を家督相続人に選定する旨を決議したときは、右の決議は無効ではなく、右の決議はその後裁判所の…
あてはめ
1. 旧民法下では決議無効により親族が改めて相続人に選定され得る地位にあったが、新民法附則25条2項により遺産相続が開始したものとみなされる結果、相続人が未決定の状態は解消された。したがって、上告人らはもはや旧法上の地位になく、新法上の相続人が直接権利を主張すれば足りるため、確認の利益は認められない。 2. 相続回復請求権の時効については、相続開始時(昭和12年8月13日)を起算点とすべきである。本件提訴時点で既に20年を経過した昭和32年8月13日に時効が完成しているため、予備的請求も認められない。
結論
1. 親族会決議の無効確認を求める訴えは、確認の利益を欠き不適法である。 2. 相続回復請求権は相続開始から20年を経過し時効により消滅しているため、請求は棄却される。
実務上の射程
新法移行期の特有の論点を含むが、相続回復請求権の時効起算点については現在の実務・司法試験においても重要な判例法理(相続開始時説)として確立している。確認の利益の判断手法についても、現在の法律関係の解決に資するかという視点から参考になる。
事件番号: 昭和27(オ)1258 / 裁判年月日: 昭和29年2月26日 / 結論: 棄却
親族会の招集期日の変更決定が、三名の会員中一名だけに送達されたため、右期日に他の二名が出席してなした決議も当然無効ではなく、訴により取消を求め得るにすぎない。
事件番号: 昭和27(オ)990 / 裁判年月日: 昭和30年1月21日 / 結論: 棄却
法定の推定家督相続人がその相続権を失つた後に懐胎出生した直系卑属は代襲相続をする権利を有しない。
事件番号: 昭和24(オ)70 / 裁判年月日: 昭和25年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親族会員が、家督相続人の選定という決議事項の当事者の内縁の夫であっても、そのことのみをもって当該決議事項につき直接利害関係を有することにはならず、除斥の対象とはならない。 第1 事案の概要:亡Dの家督相続人を選定する親族会において、被上告人が候補者として選定されるかどうかの決議が行われた。この親族…
事件番号: 昭和44(オ)1138 / 裁判年月日: 昭和45年3月3日 / 結論: 棄却
自己が家督相続人として選定されたことを理由として、戸籍簿上の家督相続人を排除し自己の家督相続人たる地位を回復することを目的とする請求は、戸籍簿上の家督相続人を相手方とする家督相続回復の訴によるべきであり、選定者を相手方として家督相続人たる地位の確認を求める訴は確認の利益を有しない。